35話:部屋の外へ ページ37
「天女様、どうなさったんですか」
心配半分、警戒半分といった様子の仙蔵さんに肩を揺すられ、私は慌てて上体を起こした。
「大丈夫、です。食べすぎたみたいで、お腹が痛くて」
不審な行動をしていては、部屋の外に出なくともザクッとやられてしまうかもしれない。
仙蔵さんに対して無防備に背中を曝け出すのも悪手だろう。
なんでもないフリをしなければ。
「腹痛ですか……。医務室に行けば、薬がありますが」
どうなさいますか、と問われるも、私はぶんぶんと首を振る。
薬と書いて、毒薬と読むやつかもしれない。
嫌だ。私はまだ死にたくない。
どこまでも頑なな私に、仙蔵さんは深く溜息を吐いた。
「天女様、一旦部屋を出ましょう」
突然の提案に、私は目をまたたく。
私にシナ先生との約束を破れと言うのか。
「なんでですか。嫌です」
せっかく少し得られた信頼を裏切るのも、私のことを天女だと思っている人に殺されるのも嫌だ。
ぐいっと引かれた片腕を振り解こうと顔を上げると、ひどく真剣な顔をした仙蔵さんと目が合った。
「この部屋で長時間生活するのは危険だと言っている。天女になりたくなければ今すぐここから出なさい」
上辺だけとはいえ、今まで私に対しては丁寧な姿勢を崩さなかった仙蔵さんからの命令口調に、驚いて腕の力が抜ける。
その一瞬の隙を突くように、仙蔵さんが私を抱え上げた。
「えっ、あの」
「不快かもしれませんが、我慢してください」
ちらりと流された目線で黙れ、と言われているのがわかり、私はパッと口を押さえる。
私を抱えたまま器用に仙蔵さんが戸を開けた途端、新鮮な空気が入ってきた。
胸いっぱいに酸素を吸い込んだ私は、小さく首を傾げる。
……あれ？ お腹痛いのちょっとマシになったかも。
「体調は」
「少し良くなった気がします」
おかしい。食べすぎが原因ではなかったのか。
むーんと唸る私を一瞥して「やはりな」と呟くと、仙蔵さんはスタスタと歩き始める。
「……あのぅ、一体どこへ向かっているんでしょうか？」
「私の部屋です」
……仙蔵さんの、部屋？
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魚月(プロフ) - 小桜さん» わかります！めちゃくちゃあるあるですね！ありがとうございます。参考にさせていただきます！ (2022年3月29日 20時) (
レス) id: cd436a6c71 (このIDを非表示/違反報告)
小桜(プロフ) - 魚月さん» そうなんです！ 私も本大好きなんですよ〜。私の場合は、途中まで読んだ本を栞を挟んだりするんじゃなくて、開いたまま伏せて置くのが許せません！ 型が残ってしまうので。……これは結構あるあるなんじゃないかな〜って思ってます！ (2022年3月28日 22時) (レス) id: 8b4a915ba2 (このIDを非表示/違反報告)
魚月(プロフ) - （続き）夢主ちゃんを究極の本好きにするため、本好きの友人達から「本好きあるある」を募って書いています。私はこうだな、というのがありましたら、ぜひ教えてくださいね！ (2022年3月28日 19時) (レス) id: cd436a6c71 (このIDを非表示/違反報告)
魚月(プロフ) - 小桜さん» コメントありがとうございます！ 夢主ちゃんと気が合いそうとは、小桜さんもなかなかの本好きですね。……実は作者もです笑。 (2022年3月28日 19時) (レス) id: cd436a6c71 (このIDを非表示/違反報告)
小桜(プロフ) - ヤバい……夢主ちゃんの言うことめっちゃ分かる……！！ この子とは気が合いそうです！ とても面白く、続きが楽しみです。更新頑張って下さい！ (2022年3月28日 7時) (レス) @page19 id: 8b4a915ba2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：真白 | 作成日時：2022年3月15日 9時
