ビニール傘 ページ16
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カズが、あたしを置いて端にある売店へと消える。
あの狭い空間に2人で入ってしまったら、確実に気付かれるな。なんて
らしくもない恐ろしいことを、無意識に思った自分に寒気がした。
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数分もしないで、カズが足早に戻ってくる。
「何を買ったの？」って聞く前に、建物から出ることにした。
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「….。」
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外は、霧雨から大雨に変わっていた。
地面を打ち付ける大粒の雨
せっかく咲いた桜も、雨にやられていた。
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傘を刺そうとした手を制される
あなたを見たら、小さく笑った。
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「こんな雨の日に、張ってる奴なんていねーよ」
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カズが持っていた大きなビニール傘
それが雨空に咲いたら、あなたが手を引いてくれた。
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「おまえ、絶対歌にするなよ」
「傘がぶつかって真っ直ぐ歩けないがよかったな…」
「バカにしてんだろ(笑)」
・
あたしに気を遣って、カズの肩が濡れないように
なるべく距離を縮めて歩く。
本当は、このまま逃げたかった。
全部この雨のせいにして、全部捨てたかった。
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だけど、たった数分の距離にあるカズのマンションにはすぐに着いて
傘を閉じる彼を横目に、あたしは足早に中へと入る。
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「雨の日はね、どうせ綺麗に写真撮れないからいいの」
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エレベーターの中で、そんなことを言って戯ける。
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「さっき、なに買ったの？」
「あぁ、そっか」
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上着のポケットから出て来た、湿気にやられた紙袋
その中には、月と東京タワーをモチーフにした金と銀のストラップが入っていた。
・
「どっちがいい？」
「…うそ」
「いらないなら凛ちゃんにあげるわ」
「いる！」
・
嬉しくて、ただ嬉しくて
カズの手から金色のストラップをもらう。
・
「じゃあ、銀のは俺のね？」
・
湿気でストレートに戻ってしまった前髪を、邪魔そうに指で分けながらエレベーターを下りる
その横顔が、やっぱり好きだった。
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なるちゃん(プロフ) - 休載をはさんで戻ってらしたのですね。完結おめでとうございます！ フィクションとわかっているのに、境界線が曖昧になるほどのリアル感。フィクションならではのファンタジー感。時折泣きながらも楽しい時間でした。ありがとうございました！ (2018年9月21日 12時) (
レス) id: a1fe1fb9b8 (このIDを非表示/違反報告)
里紗(プロフ) - まりもさんの書く文章がすごく綺麗で大好きです！2人にくっついて欲しくて正直涙が止まらないけど、この終わり方すごい綺麗だな…って思います！！ (2018年9月16日 23時) (レス) id: aef7ecfa5d (このIDを非表示/違反報告)
naru.(プロフ) - 完結おめでとうございます！番外編で2人がくっつくのが見たいです！！ (2018年8月8日 12時) (レス) id: 1e20910ced (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 沢山泣きました、とても素敵なお話でした。こんなに泣かされるとは思ってませんでした（笑）最後まで綺麗な文章、考えられたストーリーでとても面白かったです。この作品に出会えてよかったです。大好きです。 (2018年5月25日 18時) (レス) id: bc7a356a9c (このIDを非表示/違反報告)
まーたん(プロフ) - 完結おめでとうございます。最後の最後竹蔵じいちゃんからの写真に思わず泣いてしまいました。切なく悲しいけれど、お互いが別々の道で輝いて幸せになって欲しいと願っています、 素敵なお話ありがとうございました。 (2018年5月25日 3時) (レス) id: e2a1c3fdb1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：.
| 作成日時：2018年3月31日 20時
