By a trick of fate ~ 2 (ページ33)

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82.あの頃ページ33

｢わり、急用、後で金払うわ｣

｢は？！慎吾？！え！Aさん！？なんで？！｣

慎吾くんの荷物を取りに席にいくと、もちろん酷く驚いた顔をする93年組。

｢…Aちゃん、行くよ｣

そう言ってまた私の手を取って歩き出す。

ぐんぐん歩いていく慎吾くんに私は早足でついて行くのがやっと。

そして、2人で話せる場所、と言えば_________

カランと、お決まりの音を鳴らして、いつものお店。

入ってきた私たちを見るなり、もちろん驚く表情を見せる貴徳さん。

｢…慎吾、、、いらっしゃい｣

貴徳さんはその名を呟くと、直ぐに笑顔に戻った。

そんな貴徳さんに、慎吾くんは軽く会釈する。

そして、2人でカウンターに座る。

どちらから話すわけでもなく、沈黙が続く。

カタン、

と、音がして、まだ何も言ってないのに出てきたお酒は、私も慎吾くんもいつも頼むお酒だった。

その音を合図に、慎吾くんが話し出した。

｢…びっくりやんなぁ｣

｢まさかAちゃんがおるんやもん…笑｣

そう、へにゃっと笑う慎吾くんはあの頃と何も変わってなかった。

｢…野球選手…だったんだね｣

｢…ごめん、言わんくて｣

また訪れる沈黙。

私は1人、あの頃を思い出していた_____