拾弐 ページ32
智洋side
しばらく菊と話して、満足したらしく勝利くんは帰るそう。
なんとまあ、美少年やなぁ。
これで男なんやろ?
考えられへんくらい、顔が整っとる。
流星の隣に並べば、それはもう輝かしすぎて直視出来へんで。
「それでは、失礼します。」
「おん。勝利、ほんまに一人で大丈夫か?」
「大丈夫だよ。俺、男だよ?
それに、足には自信があるからさ。」
「ほんまに?気ぃつけてな。」
家に来るまでに仲良くなったらしく、のんちゃんが手を振る。
勝利くんも手を振った後、俺達に背を向けて、歩き出した。
が、立ち止まって再びこちらを向いた。
…いや、正確には、俺の隣に座っとる菊の方やな。
「…姐さん。本当に、いいんですか。言わなくて。」
…?
なんのことやろ。
「…ええよ。うちはこれで幸せや。
ほら梅、早う帰らんと。また楼主が暴れるで?」
口元を押さえ、クスクスと笑いながら菊が言った。
…またや。
菊は時々、切ないような、悲しいような。
そんな顔をする。
「…そう、ですね。
姐さんのこと、しばらくよろしくお願いします。
それでは、失礼します。」
そう言って、勝利くんは去った。
「なぁ、菊?言わんでもええって、何を…」
「これから、しばらくお世話になります。
よろしくお願いします。」
照史くんの言葉を遮って、菊が言った。
まるで、何も聞くなと言わんばかりに。
これは、深追いせん方がええ。
その方が、菊の為でも、俺達の為でもある。
心の中で、頷いた。
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作者名:百瀬 花楓 | 作成日時:2020年2月29日 20時