漆 ページ27
望side
俺が通されたのは落ち着いた雰囲気の部屋だった。
座るとすぐに、男が口を開いた。
?「…改めて、さっきはすまんかった。
店の者のことになると、どうも我を忘れてまう。」
桃「い、いえ。俺は大丈夫です。
ちょっとびっくりしたけど…。」
男が頭を下げてきたので、少し気まずくなる。
…足が痺れてきた。
?「足、楽にしていただいて大丈夫ですよ。」
足をもぞもぞと動かす俺を見兼ねたのか、綺麗な人がそう言ってくれた。
有難く、胡座をかく。
横「俺はこの店の楼主、横山裕や。好きに呼んでくれ。」
梅「私は梅雛です。梅と呼んでください。」
なんか、菊と似とる名前やな。
この人も男なんかな…。
桃「俺は、望です。大体、のんちゃんって呼ばれとるか
な…。」
自己紹介をしたら、横山さんが目を見開いた。
梅さんも少し、驚いているような…。
俺、なんか要らんこと言ったか?
桃「どうか、しました…?」
横「あ、ああ…。いや、なんでもないわ。」
…変なの。
横「それじゃあ、菊のこと、聞いてもええか?」
桃「あ、はい。」
俺は、事細かに話した。
俺が怪我をして、助けてもらったこと。
帰りに、転んで足に怪我を負ってしまったこと。
一晩ほど寝ていたが、今は家でゆっくりしていて、命に別状はないこと。
…因みに、菊を盗んだことは言っていない。
今は許して。
多分このことを言ったら、俺は本当にしばかれる。
横「そうか…。相変わらず菊は、人を放っておけないんや
な。」
桃「そう、なんですか?」
横「おん。あいつは七人兄弟で六人弟がおるんやけどな、
随分面倒見がええ兄やったそうや。
あいつのおかんから聞いた。」
七人兄弟…、うちよりも1人多い。
しかも、一番上。
濱ちゃんと一緒で、大変そうだ。
…てか俺、もうそろそろ帰らんと。
皆が心配してまう。
桃「そうですか。…あの、俺そろそろ帰らなあかんの
で…。」
横「そうか。…梅、菊の様子見てきてくれへん?」
梅「そうですね。…はい、分かりました。
望くん、一緒に行ってもいいですか?」
あー…どうやろ、まあ、大丈夫か。
桃「はい。多分大丈夫です。」
よし、行こう。
俺は何回道案内をするのだろうか。
桃「ほな、失礼します。」
梅「行ってきますね。」
羽織を着た梅さんと一緒に、家へと向かった。
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作者名:百瀬 花楓 | 作成日時:2020年2月29日 20時