273 ページ29
.
「あ」
「は?」
______菊川くんとポアロでハムサンドを食べた日から、またまた数日後。
何かあったら迷わず俺の名前を呼ぶこと!を条件に、研二くんはじんぺーちゃんと爆発事件を解決にし行った。
あまりにも研二くんがソワソワしてたから、私が行っていいよって言ったの。だから今日は一人。
行く宛もなくブラブラと道を歩いていると、前方から見知った人影が近づいてくるのが見えて。
その人影に、私は思わず足を止めて目を見開く。
もしかしたらこれが、【彼】とする初めての会話かもしれない。
「……あ、あの、……諸星、くん?」
「……やっぱりお前も、俺のこと知ってんだな」
そう言って目を伏せる諸星くんは、どこか最後に見た姿とは印象が違う。
それもそうだ。
だって私が最後に見た諸星くんは、【ヒロキくん】の入った諸星くんだったから。
中身が別人なら、印象が違うのも当然で。
……でも、あの日のことを、諸星くんは覚えてなくて。
「えっと、諸星くんは、この辺に住んでるの?」
「いや、今日は親父の用事でたまたまこっちに来ただけだ。けどなんか知り合いと立ち話してっから、俺だけ退散してきた」
「えっ、それって大丈夫なの……?」
「近くにどうせSPが着いてる。どうってことねぇよ」
菊川くんの時も思ったけど、お金持ちってやっぱり凄いんだなぁ。
私が映画でしか聞かない【SP】という単語に感心した声を漏らしていると、諸星くんはどこか悲しげに視線を落とした。
「______俺だけが、なんも覚えてねぇんだ」
「え……?」
「あの日、俺にとってはただ寝て起きただけなのに、周りに居るアイツらは全員変わってた。……記憶のねぇ俺だけが、ずっと、周りから取り残されて生きてんだ」
自分だけが、何も覚えていない世界。
そんな世界に取り残されて生きていくことは、きっと怖くて仕方がないはずで。
……でも、なんとなく。
今の諸星くんなら、大丈夫な気がするんだ。
あの日の横暴な振る舞いとは打って変わり、しおらしくなってしまった諸星くんの手を握って、私はその顔を覗き込む。
「……今の諸星くんなら、きっと大丈夫だよ」
そんな風に悩めてる諸星くんなら、きっともう大丈夫。
その言葉に「そ、そうかよ」と言って顔を背ける彼を見て、私は更に笑みをこぼした。
「あと私ね、諸星くんともお友達になりたい!」
「はぁ?……まぁ、別に良いけどよ」
「ほんと?!やったー!」
.
2681人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
侑(プロフ) - 更新待ってました、!!おかえりなさい!! (2023年3月20日 14時) (レス) @page50 id: 8afc6fd8a6 (このIDを非表示/違反報告)
みすず。(プロフ) - ふぉわっっ!?!? 待って、久々の投稿っっ!! 好きです!! 更新ありがとうございます!! 元マシュマロ。です! これからもとことん応援、推させて頂きます!!! (2023年3月20日 0時) (レス) @page50 id: 5bbebede5e (このIDを非表示/違反報告)
ふゆな(プロフ) - 更新待ってました!!!!😭 ありがとうございます嬉しいです!!!、!!👊🏻💗 (2023年3月19日 16時) (レス) id: 676d8245fd (このIDを非表示/違反報告)
たむ(プロフ) - はああああ!!!!!久しぶりの更新!!!!!わあああ!!!!ありがとうございます!応援してます!頑張ってくださいいっっ!!! (2023年3月19日 0時) (レス) @page48 id: eba900a9f0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆのみ(プロフ) - この作品を読んでコナンくんにハマりました!主様の全作品の中で1番好きです。もちろん、他の作品も大好きですよ。こちらの更新も楽しみにしてます! (2023年1月4日 23時) (レス) @page46 id: 19928cbf59 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ