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「そうか……ならば君達にも署まで同行してもらおう」
「っ……」
___警官に捕まるとゲームオーバー。
ここで警察の人に捕まったら、私とコナンくんはゲームオーバーになってしまう。
せめて、せめてコナンくんだけは逃げられる時間を、稼がないと。
私は捕まっても良いから、みんなの為にも、コナンくんだけは。
そう考えて、敢えてその場を動かない私の腕を、誰かの手が強く掴んで走り出す。
私の腕を掴んでいるそれは、紛れもない血塗れの研二くんのもので。
彼は額に脂汗を滲ませながら微笑むと、「逃げるよ、Aちゃん」と呟いた。
「で、でも!!」
「多分だけど、今の彼らに何を言っても無駄だ。この世界の俺は既に極悪人。被害を拡大させない為ならきっと、殺すことも厭われない」
「っ……」
「悪いな、コナンくん。俺のせいでこんなことに巻き込んで」
「……ううん。僕も萩原さんには何度も助けられたから」
研二くんが建物の間を縫いながら走っている間にも、後ろから何発かの銃弾が打ち込まれる。
全部が全部ではないけれど、その内の数発は研二くんの背中に当たっていて。
これ以上走っちゃダメだよと言っても、研二くんは全く聞いてくれない。
少し走って、たどり着いた人気のない裏路地。
夜のそこは街頭の灯りも届かなくて、とても薄暗い。
壁を背に座り込んだ研二くんの呼吸は、既に浅かった。
「研二くん、やだ、やだよ、死んじゃやだ……っ!」
「萩原さん……」
「は、ははっ、……痛み感じたの、なんて……いつぶり、だっけな……」
着ていた菊川くんの上着を研二くんの傷口に押し当てるけれど、血は全然止まってくれない。
寧ろ青色の上着が赤色に染まっていくだけで、大切な人を失う恐怖と不安で、視界が次第に涙で滲んでくる。
これはゲーム、これはゲームだ、ゲームの世界なんだ。
だからまだ、研二くんは死んでない。
きっと今もあそこで、病院のベッドで、ぐっすり眠ってるから。
だから、だから……っ!
「……どうやら、ノアズ・アーク、にとっての俺は……邪魔な存在、ってやつらしい……わざわざこんな手段を……使うってことは、恐らく……プログラムで直接、俺を消すことは……出来ない……感じか……」
「喋っちゃダメっ、傷が……!」
「……もう十分だ、Aちゃん」
その言葉と共に頬を包まれて、顔を上げさせられる。
目のあった研二くんは、傷だらけとは思えないほどに穏やかな笑みを浮かべていた。
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侑(プロフ) - 更新待ってました、!!おかえりなさい!! (2023年3月20日 14時) (レス) @page50 id: 8afc6fd8a6 (このIDを非表示/違反報告)
みすず。(プロフ) - ふぉわっっ!?!? 待って、久々の投稿っっ!! 好きです!! 更新ありがとうございます!! 元マシュマロ。です! これからもとことん応援、推させて頂きます!!! (2023年3月20日 0時) (レス) @page50 id: 5bbebede5e (このIDを非表示/違反報告)
ふゆな(プロフ) - 更新待ってました!!!!😭 ありがとうございます嬉しいです!!!、!!👊🏻💗 (2023年3月19日 16時) (レス) id: 676d8245fd (このIDを非表示/違反報告)
たむ(プロフ) - はああああ!!!!!久しぶりの更新!!!!!わあああ!!!!ありがとうございます!応援してます!頑張ってくださいいっっ!!! (2023年3月19日 0時) (レス) @page48 id: eba900a9f0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆのみ(プロフ) - この作品を読んでコナンくんにハマりました!主様の全作品の中で1番好きです。もちろん、他の作品も大好きですよ。こちらの更新も楽しみにしてます! (2023年1月4日 23時) (レス) @page46 id: 19928cbf59 (このIDを非表示/違反報告)
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