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「……どうしてそれを、僕にお願いしようと思ったの?」
なんでも見透かしていそうな瞳を見上げてみるが、サングラスに遮られている松田刑事の目は、夜であることもあって全く見えない。
代わりに口元だけは分かりやすく変化して、松田刑事は形の良い唇の端を釣り上げると、「なんでだろうな」と眉を顰めた。
松田刑事とはよく事件現場で会うが、彼からすれば、俺だって歩美や元太、光彦たちと同じな筈。
思ったとしても、事件に首を突っ込みたがる多少ませたガキであるくらいだ。
なのに松田刑事は、何故そんなガキの俺に、
___『眼鏡のボウズからお前が窓から飛び降りたって聞いて、こっちは飛んできたんだぞ……!』
あんなにも大切にしている娘を託そうと、無意識にでも思ったのだろう。
「……多分、刑事の勘だ」
「勘……ね」
「あぁ。______お前は他の奴とは違う」
勘だと口では言っているのに、随分と断言する人だ。
バレてはいないのだろうが、これ以上何かを言うと盛大に墓穴を掘りそうで、「あははぁ、なんでだろぉ?僕も普通の小一なんだけどなぁ?」と誤魔化しておく。
……前々から、この刑事には他よりも鋭い部分がある。
事件現場でもよく目暮警部や佐藤刑事に注意されるような不真面目な人なのに、その視線は常に周囲を見渡していて。
そして何故か、いち早く俺に伝えてくる。
まるで「お前ならこんな事件、すぐに解決できんだろ」と言わんばかりに。
「あ、もうこんな時間!蘭ねーちゃんが心配するから、僕そろそろ帰らなきゃ!じゃあね松田刑事!」
「またなボウズ。今度は変な事件引き連れてくんなよ」
「あははっ」
なんで俺が事件を呼び寄せてる前提なんだよ。
……いや、まぁ良い。
松田刑事に今の俺がどう思われていようと、どうせこの体とも今日でおさらばだ。
俺はあの白乾児って酒を飲んで、工藤新一に戻るんだ。
「あぁ、最後に一つ良いか」
吸い終わった煙草を携帯灰皿に押し込んだ松田刑事が、ふと何かを思い出したように俺の前までやって来る。
「さっきはなんでだろうなと答えたが、一つだけ理由を思い出した」
あまり良い予感はしないものの、聞きたくないと遮るのもおかしな話で。
「へー!どんな理由?」と聞き返すと、松田刑事は「ふっ」と鼻で笑った。
「______お前とは長い付き合いになりそうだろ?」
ハハッ、勘弁してくれ。アンタの刑事の勘は侮れねぇんだよ。
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宮野冬姫(プロフ) - それから、158の絶好の場所というセリフが格好の場所になってます (2022年7月10日 21時) (レス) @page12 id: 09433d1ffe (このIDを非表示/違反報告)
宮野冬姫(プロフ) - 150のパトカーのサイレンですが、ピーポーピーポーは救急車では? (2022年7月10日 21時) (レス) @page4 id: 09433d1ffe (このIDを非表示/違反報告)
朱夢 - とても面白いです‼️いつも楽しく読んでます。寒いですが頑張ってください‼️ (2021年12月10日 16時) (レス) id: af58c4fc49 (このIDを非表示/違反報告)
琉流 - 更新ありがとうございます。しかし本当に警察学校組は若いですよね…。 (2021年12月10日 2時) (レス) @page48 id: 45a1f0a151 (このIDを非表示/違反報告)
とーふ(プロフ) - 更新ありがとうございます!研二くんとじんぺーちゃん、警察学校組の皆と話している夢主ちゃん可愛い!記憶に残ってないのは悲しいですけどね…これからも更新頑張ってください! (2021年12月9日 18時) (レス) @page48 id: a9336fcc7d (このIDを非表示/違反報告)
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