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「……」
「……」
「……お兄さんがまつしたじんのすけ?」
「おい誰だそりゃ」
『ごめん俺も知らない』
結局何日経ってもお友達は出来なかったので、夏休みに入った私は研二くんと二人寂しくお散歩に来ていた。
目的は毎日日記をつけるため。
ここ二週間ずっと「宿題した」「読書した」「お昼寝した」しか書いてないから、そろそろ新しいことも書いた方が良いんだって。
なんかね、「経験者は語るよ、Aちゃん。因みに俺は中学の時に同じような日記出して担任にしばかれた」って研二くんが言ってた。
そんな研二くんと一緒に歩いていると、急に背後で「あ」という声が聞こえてきて。
振り向くと、研二くんが気まずそうな顔でどこかを見つめていた。
その視線の先に居た人が、この「まつしたじんのすけ」さん。
あだ名はじんぺーちゃん。
ところでじんぺーちゃんの「ぺ」はどこから来たんだろう?
「だれって、じんぺーちゃんのお名前だよ!」
「っ……おい、お前、その呼び方」
「え?……じんぺーちゃんのこと?お兄さん、じんぺーちゃんじゃないの?だってけんじく……あ」
「シー!」とジェスチャーをする研二くんに気づいて言葉を止める。
そうだった。研二くんはみんなには見えていないんだ。
咄嗟に両手で口を塞ぐと、じんぺーちゃんは更に目を大きく見開いていた。
するとどういうわけか、じんぺーちゃんはツカツカと私の目の前まで歩み寄ってきて、グッと顔を近づけてくる。
その突然のことに、私は昔の嫌なことを思い出してしまって、びくりと肩を震わせた。
「お前、ハギのこと知ってんのか」
「はぎ……?じんぺーちゃん、ぼたもち食べたいの?」
「ちげぇよ。ハギってのは、萩原研二…………俺の、親友のことだ」
悲しそうに目を伏せたじんぺーちゃんを見て、チラリと研二くんを見上げる。
研二くんは私の視線に気づくと、困ったように笑って、唇に人差し指を当てた。
喋っちゃダメ、らしい。
「……じんぺーちゃん、ごめんね。わたしね、その、はぎわら?って人、知らないの。ごめんね」
「……そうか。いや、悪い。嬢ちゃん、今日のことは忘れてくれ。怖がらせて悪かったな」
じんぺーちゃんはそう言うと、くしゃりと私の頭を撫でて、どこかへ行ってしまった。
隣を見上げると、その背中を、研二くんが寂しそうに見つめていた。
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宮野冬姫(プロフ) - 本当ですか!ありがとうございます!! (2022年7月10日 13時) (レス) id: 09433d1ffe (このIDを非表示/違反報告)
無糖(プロフ) - 宮野冬姫さん» 分かりました!変更しても物語には影響がないので、水銀レバーに変えておきます! (2022年7月10日 9時) (レス) id: 24145c4343 (このIDを非表示/違反報告)
宮野冬姫(プロフ) - そうなんですか!でも、松田は水銀レバーと言っていたので個人的はコナン世界に合わせてほしいです。生意気なこと言ってすみません (2022年7月10日 9時) (レス) id: 09433d1ffe (このIDを非表示/違反報告)
無糖(プロフ) - 宮野冬姫さん» コメントありがとうございます!ご指摘に関してですが、現実世界だと水銀レバーではなく水銀スイッチというらしくて、間違いではないです!多分無駄にリアリティーを追求してしまったんでしょうね(笑)ご指摘ありがとうございます! (2022年7月10日 9時) (レス) @page29 id: 24145c4343 (このIDを非表示/違反報告)
宮野冬姫(プロフ) - 028の爆弾のお話、水銀スイッチではなく水銀レバーですよ!! (2022年7月9日 23時) (レス) @page29 id: 09433d1ffe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:無糖 | 作成日時:2021年6月13日 18時