040 ページ41
．
カン、カン、カン
一定の間隔で階段の方から聞こえてくる足音。
ポカポカになりつつあった心がひやりと冷めきり、私は咄嗟にじんぺーちゃんの頭を抱きしめる。
「A、一回降ろすぞ」と言われ、ずっと宙ぶらりんだった足が地面につく。
それから私を後ろに隠す、じんぺーちゃんの大きな背中。
出てくるなというように肩を掴む手もいつもより大きく感じて。
じんぺーちゃんの隣に研二くんも降り立って、目の前に広がる二つの壁。
やがて重たい扉が押し開けられる音が鼓膜を揺らした。
「っ、松田、お前どうして……！」
「……そらこっちのセリフだぜ、諸伏」
モロフシ＿＿＿その四文字に、私は聞き覚えがある。
夏休みに散歩をしていて、じんぺーちゃんとお髭のお兄さんにあった時、研二くんが言っていた名前だ。
どうやらじんぺーちゃんともお友達みたいで。
ピリピリとしているけれど、言葉の端々からは仲の良さが伝わってくる。
何かで、喧嘩するほど仲が良いって書いてあった。
もしかして二人も喧嘩してるのかな。
『Aちゃん、絶対にじんぺーちゃんから離れちゃダメだからな。今のあいつは危なすぎる』
「……うん、わかった」
じんぺーちゃんから離れない代わりに、腕の隙間から向こう側の様子を窺う。
私たちと対峙するように立っているのは、やっぱりあの時のお髭のお兄さんだった。
あだ名はモロフシちゃん。
今日は背中にあの大きなカバンを背負っていない。
ということは、らいふるってのも持ってないんだと思う。
その事をじんぺーちゃんに伝えるかどうか迷っているうちに、パチリと、壁越しに視線が交わって。
切長のモロフシちゃんの目が縦に大きく見開かれた。
「君は、あの時の…………もしかして今回の件も、君が絡んでいるのかっ！」
突然の大きな声にビクッと肩が跳ねる。
どうしてモロフシちゃんはあんなにも怒ってるんだろう。
私、また何かしちゃったのかな。
私、良い子じゃなかったのかな。
＿＿＿『どうしてママの言うことが聞けないの！！』
「っ、じんぺーちゃん……」
ぎゅっとじんぺーちゃんの服を握りしめる。
覚えてることは悲しくないって言った。
でも、やっぱり、怖い場面まではっきりと思い出せるのは、いやだ。
まるでそこに怒ったママがいるようで。
強く掴まれた手首の感覚が蘇るようで。
息がしづらくなるから。
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2003人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
宮野冬姫(プロフ) - 本当ですか！ありがとうございます！！ (2022年7月10日 13時) (
レス) id: 09433d1ffe (このIDを非表示/違反報告)
無糖(プロフ) - 宮野冬姫さん» 分かりました！変更しても物語には影響がないので、水銀レバーに変えておきます！ (2022年7月10日 9時) (レス) id: 24145c4343 (このIDを非表示/違反報告)
宮野冬姫(プロフ) - そうなんですか！でも、松田は水銀レバーと言っていたので個人的はコナン世界に合わせてほしいです。生意気なこと言ってすみません (2022年7月10日 9時) (レス) id: 09433d1ffe (このIDを非表示/違反報告)
無糖(プロフ) - 宮野冬姫さん» コメントありがとうございます！ご指摘に関してですが、現実世界だと水銀レバーではなく水銀スイッチというらしくて、間違いではないです！多分無駄にリアリティーを追求してしまったんでしょうね（笑）ご指摘ありがとうございます！ (2022年7月10日 9時) (レス) @page29 id: 24145c4343 (このIDを非表示/違反報告)
宮野冬姫(プロフ) - 028の爆弾のお話、水銀スイッチではなく水銀レバーですよ！！ (2022年7月9日 23時) (レス) @page29 id: 09433d1ffe (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：無糖
| 作成日時：2021年6月13日 18時
