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「お前、まさか……」


「んー?」







見上げた先では、俺に肩車をされたAが首を傾げている。




この様子だと、こいつは気づいていないのか。

言っていて可笑しいなと、微塵も疑問に思わないのか。



自分のその能力が普通とかけ離れていることに。






思えば気になる点はいくつかあった。




いくらハギが隣に居るとはいえ、あんなにも完璧にセリフを再現できるものだろうか。


普通、人間というのは長文を聞きながら重要な部分を掻い摘んで、大まかな内容を理解するものだ。





それなのにこいつは、いつだって完璧にハギの言葉を俺に伝えてきて、口調さえ完全に一緒で。




……まさかずっと、あの一瞬で全部を記憶して、俺に伝えてきていたのか?








「……なぁ、A。お前、いっつもどうやって記憶してる?」



「きおく……?」








思い返すとこいつが言った内容で、事実でないことは一度もなかった。




あるとしたら俺の名前を「まつしたじんのすけ」と覚えていたことくらいだが、一度名前と漢字を教えただけで、Aはすらすらと書けるようになってしまった。



その時点でもっと疑問を持つべきだっただろうか。

時々見るハギの絵がやたら似ているのも、もしかして。







「______よく分かんないけど、一回見たら全部おぼえられるよ?」







やはり、そういうことだ。



こいつは周りが気づいていないだけで、一つ他人とズレた能力を持ってる。





そして恐らく、それは。


___瞬間記憶能力。





よくあれば便利だと羨ましがられる能力だが、実際は良いことばかりではない。




一度見たものを忘れないということは、いつまでだってその記憶を保持したままだということで。








___『……パパはね、いないよ』








つまり、何年の月日が経とうと、彼女たちには、心に入った傷が真新しく鮮明に思い出せるということだ。




それがいかに辛いことなのか。



一度崩れ落ちそうなほどの絶望に直面したからこそよく分かる。


あんな感情は二度と体験したくないと、大人の俺ですら思うのだから。







「全部、覚えてんのか」



「うん」



「……父親の、ことも」







三歳の時の記憶など普通なら残っていないはずだ。



けれどAは俺の問いに呆気なく頷き、目を伏せて。


そして、幼いその顔に、子どものものとは思えない悲しげな笑みを浮かべる。







「…………全部ね、わすれられないの」







忘れたいことも、全部。







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宮野冬姫(プロフ) - 本当ですか!ありがとうございます!! (2022年7月10日 13時) (レス) id: 09433d1ffe (このIDを非表示/違反報告)
無糖(プロフ) - 宮野冬姫さん» 分かりました!変更しても物語には影響がないので、水銀レバーに変えておきます! (2022年7月10日 9時) (レス) id: 24145c4343 (このIDを非表示/違反報告)
宮野冬姫(プロフ) - そうなんですか!でも、松田は水銀レバーと言っていたので個人的はコナン世界に合わせてほしいです。生意気なこと言ってすみません (2022年7月10日 9時) (レス) id: 09433d1ffe (このIDを非表示/違反報告)
無糖(プロフ) - 宮野冬姫さん» コメントありがとうございます!ご指摘に関してですが、現実世界だと水銀レバーではなく水銀スイッチというらしくて、間違いではないです!多分無駄にリアリティーを追求してしまったんでしょうね(笑)ご指摘ありがとうございます! (2022年7月10日 9時) (レス) @page29 id: 24145c4343 (このIDを非表示/違反報告)
宮野冬姫(プロフ) - 028の爆弾のお話、水銀スイッチではなく水銀レバーですよ!! (2022年7月9日 23時) (レス) @page29 id: 09433d1ffe (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:無糖 | 作成日時:2021年6月13日 18時

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