1．わたしの背後霊 研二くん【警察学校組】

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＿＿＿＿＿＿四年前の11月7日。




その日を境に、俺、萩原研二はとある女の子の背後霊に転職した。







あの後の自分がどうなったかなど想像もしたくないが、今の現状を見れば本体の状態など一目瞭然である。





余程酷(むご)い死に方をしたのだろう。




流石に自分の死体を見て興奮するほど飢えてはいないので、確認には行かなかった。







今はもう灰にでもなって土の下に埋められているのだろうか。





まさかこんなにも自由奔放に生きてきた自分が22歳で人生をぽっくり終えるなんて。


人間なんて案外こんなもんなのかもしれない。








「けんじくん！けんじくん！見て、またテストで100点もらっちゃった！」








この有り余った元気で俺に百点の答案用紙を見せてくる女の子は、秋沢Aちゃん。




俺が背後霊となって取り憑いてしまった女の子である。







元気で笑顔が可愛くて、読書が好きで頭も良くて。





ただちょっと人との距離感を図るのが苦手な、極々普通の女の子だ。







俺の姿が見える点を除いて、だが。









今でこそこんなにも懐いてくれているが、出会った当初はそれはもう凄まじい嫌われ具合だった。







朝起きて俺の顔を見たら大泣き。



少しでも近くに寄ったら大泣き。



ていうか俺がそこにいるだけで大泣き。






タイミングが悪かった時にはおもちゃを投げられたこともあって、痛覚は無いはずなのに心がめっちゃ痛かった。




子どもに嫌われるって結構メンタルやられるよね。



鋼メンタルの俺ですらお豆腐メンタルに早変わりだったわ。








「……けんじくん、今日もママ遅いね」








そんな彼女の母親は、とても多忙だ。






いつも朝早くに家を出て行っては夜遅くに帰ってきて泥のように眠っている。





朝食は食パンとマーガリンが机にポツンとあるだけ。



夜ご飯は冷蔵庫に並べられたお惣菜とご飯。






彼女が小学一年生になってからは、机に一万円札が置かれているだけなんてのもザラだった。








けれどどこまでも健気なAちゃんは、ママを困らせたくないからと言ってなんでも一人でこなそうとする。






きっとこの子は上手な甘え方を知らないんだ。




この子が一人でなんでも出来るようになるにつれ、母親の関心が薄まっていることにも気づけないくらい、鈍感で不器用で。







そんな彼女を、守ってあげたいと思ったんだ。








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