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28話 ページ30

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明朗に笑う彼を見て、私の心臓は少し変な音を立て、二人の未来にあなたはいないのよ、そう誰かに囁かれた。









「こんにちは、煉獄さん」


「うむ!天気は生憎だが、晴れ晴れした表情だな少年!」





翌朝、また街へと繰り出し、煉獄さんと合流した。
少年は朝酷く泣いてしまったが、腫れた目でも表情はすっきりとしている。

今日も生憎の天気で、さして強くもないが傘をささないと濡れてしまう程度の雨だ。



「ねえ、A。手を繋ご」

私は気の抜けた声で笑ってしまうと、差し出された手を握る。

少年は煉獄さんを見上げると、何も言わずに手を伸ばす。煉獄さんは濃く笑って、彼もまた少年の小さな手を握り返した。



……こうして見ると、周囲は私達をどう捉えるだろう。



やっぱり、親子に見えるんだと思う。
雨の日でも楽しくなれるような親子に。



私のやっていることは、愚かしくも人間のようだ。
いっぱい殺して来た私にとっては見たことの無い事。

でも、人の気持ちを味わえた気がした。至上の幸せを感じることができた気がした。


最後に幸せを享受されるなんて。





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教えられた住所は待ち合わせ場所から近かく、家の門の前にあの日の若夫婦が待っていた。

少年の父となる人が慌てて私と煉獄さんから荷物を受け取る。
少年の母となる人が笑って私と煉獄さんに労いと感謝の言葉をかけた。


そうして、二人は少年を抱き締め、頭を撫で、もう泣きはしない。



『いい子でね。幸せになりなさい』


「ありがとう、A。Aも元気でね。いつか会いたい」



私はただ笑って返すだけだった。これで君と会うのは最後だ。
最後に小さかった体を抱き締めて、手を振る三人を背に私達はあの家を離れた。







『ちゃんとやって行けるでしょうか』


「あの少年の事だ。きっとやっていける。君が育てたんだ。それに雨降って地固まると言うだろう」


『そう言われると安心します』


「……子供を持つということはこういうことなんだろうな」


『あなたはきっといい父親になりますよ。その前に婚約しないといけないですけど』


_____なんだろう。なんで、胸が痛いんだろう。


苦しさに少し胸を抑えて、私は話を変えた。







『時々でいいんです。気が向いたらでいいんです。私が死んだ後、気にかけてあげてください』



すると、煉獄さんが立ち止まった。




「その話は今やめてくれ」





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おもち - 赤い花白い花の歌詞が入っていてとても惹き込まれましたー!とても素敵です!!! (2020年3月24日 21時) (レス) id: 2fd70573e8 (このIDを非表示/違反報告)
茄子(プロフ) - 小説も挿絵も何もかもがとても素敵でした……素晴らしい作品をありがとうございます…… (2020年1月25日 23時) (レス) id: 58113d68f6 (このIDを非表示/違反報告)
モルス(プロフ) - 涙が止まりません……こんな素晴らしい作品をどうもありがとう…… (2019年12月2日 14時) (レス) id: d7cc26133c (このIDを非表示/違反報告)
愛郎素(プロフ) - 香坂さん» 語彙力が!高い!!よもやよもやです……本当に書いていてよかったと感じました!これからも頑張ります! (2019年10月12日 14時) (レス) id: 56f98660a0 (このIDを非表示/違反報告)
香坂 - 言葉使いや書き方、表現に引き込まれました。一つの本を読み終えた時のような気持ちになり、とても良い作品だと心から思いました。このお話が読めてよかったです。 (2019年9月18日 17時) (レス) id: c6f322a1f4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:愛朗素 | 作成日時:2019年8月30日 21時

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