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27話 ページ29

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あっという間に4日が経って、5日も過ぎようとしていた。

部屋の隅に大きな荷物がまとまっている。
少年の服や本、私が少年に買い揃えたものは明日の朝にはほぼなくなる。


『あれは持った?この前買ったあれ』

「持ったよ。馬油でしょい?ちゃんと入れた」


寝て、起きて、ご飯を食べて、家を出たら、君はもうこの家の人間じゃあなくなるんだ。
ああ、嫌だ嫌だ。何悲観的になってるんだ。

もう決めたこと、決まったこと。

いい加減にしなさいよ。私。




背を向けて、米を研いでいた私に少年は遠慮がちに名前を呼ぶ。

「ねえ、A」


『なあに』


「僕がいなくなったら、死んじゃったりしない……?」


『しないよ』


私は嘘をついた。真っ赤な嘘をついた。
でも罪悪感は不思議とこみあげない。

だってこれは、優しい嘘のはずだから。


「煉獄さんと仲良くするの?」


『仲良くするよ?だって、私は悪い鬼じゃないんでしょ?』


「煉獄さんは……」



言いかけて、何か考え込む間隔が入った。



「煉獄さんは、Aを大切にしてくれるよ」


『なに、それ……?』




私は何を言われて、聞かれているんだろう。


煉獄さんが私を大切にする?訳がわからない。

そんなの夢物語だ。

だって、あの人は私を殺すし、私は殺される。



それが煉獄杏寿郎の義務と誇りと信念。



私はそれを成り立たせる数多のひとつ。




「Aは煉獄さんが嫌いなの?」




わからない。


わかんないよ、そんなの。


もう、調子狂うな。






____嫌いじゃないって言ったら、どうすれば正解なの。









その晩、残された時間を私と少年は一緒に過ごした。

家族ごっこも今日で終わり。




布団に二人で入って、少年の柔らかい匂いと体温を感じて、私は煉獄杏寿郎について考えるのだった。


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おもち - 赤い花白い花の歌詞が入っていてとても惹き込まれましたー!とても素敵です!!! (2020年3月24日 21時) (レス) id: 2fd70573e8 (このIDを非表示/違反報告)
茄子(プロフ) - 小説も挿絵も何もかもがとても素敵でした……素晴らしい作品をありがとうございます…… (2020年1月25日 23時) (レス) id: 58113d68f6 (このIDを非表示/違反報告)
モルス(プロフ) - 涙が止まりません……こんな素晴らしい作品をどうもありがとう…… (2019年12月2日 14時) (レス) id: d7cc26133c (このIDを非表示/違反報告)
愛郎素(プロフ) - 香坂さん» 語彙力が!高い!!よもやよもやです……本当に書いていてよかったと感じました!これからも頑張ります! (2019年10月12日 14時) (レス) id: 56f98660a0 (このIDを非表示/違反報告)
香坂 - 言葉使いや書き方、表現に引き込まれました。一つの本を読み終えた時のような気持ちになり、とても良い作品だと心から思いました。このお話が読めてよかったです。 (2019年9月18日 17時) (レス) id: c6f322a1f4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:愛朗素 | 作成日時:2019年8月30日 21時

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