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24話 ページ26

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小一時間、街を目的もなく歩いていようと思ったのはいいものの、決心がつくどころか、どんどん心は乱れて行く。

考え事を辞められない。

すっきりと晴れやかな気分にも、肯定する優しい声を出せるような気がしない。

少年への情はこれ程強かったのか。
真似っ子の母性本能は私を窮屈にする。




誰か、誰か、誰か……私の気持ちを紛らわせて、辛いのはもう嫌だ____。




びちゃびちゃと、私の歩みは音を立てて、汚らしく乱れた。
苦しさと雨の生み出す空気の重さに潰されてしまいそう。




『っ!…あ、すみません…?!』

誰かとぶつかって、思わず傘を落とす。



その人は背が高くて、傘をさしていたら顔はきっと見えない。




「どうしたんだ?酷い顔だ」




雨の曇天でも太陽はあった。

私を殺す、私を殺さない太陽が目の前に立っていた。




『れん、ごくさん………すみません!着物、濡れてませんか!』


混濁する意識が一気に吹き飛んで、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

着物は傘から零れた水滴が飛んだのか、小さな染みを作っている。



「濡れているのは君の方だ。雨の中泣くのは構わないが、あまり感心しない」


『顔が酷いだけで、泣いてません』



一瞬にして濡れ鼠になった私に煉獄は傘を半分さしてくれた。

拾おうとした自分の傘も先に拾われる。



「女性が泣いたり、悲しそうにしたりするのは、男にとっては秘密にしたい気持ちだという。着物を濡らした罪として、教えてくれないか」


女性の扱いが上手いことで。

私は皮肉に笑って、そう言った。



「この前の手紙の返事に思う事があった。それについても、色々と君と話がしたい」

『そんなことしたら、情が移りますよ。馬鹿ですか、首飛ばせないようになります』

「今日の君はやけに攻撃的だな!」


これは後で後悔して、顔を見られなくなるやつだ……。
私は俯く。

ただ、少しだけ乱れた調律が整った気がした。



『……だけなら、』

「ん?」

『一時間だけなら、大丈夫です』

「そうか!」




この人、本当に私の首を撥ねるつもりはあるのか……


少し上をこっそり見上げて、私は思った。







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情は、人の善良性と思いに漬け込む。
知らない内に、情に付け込まれ、振り回されるということを、まだ誰も知らない。



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おもち - 赤い花白い花の歌詞が入っていてとても惹き込まれましたー!とても素敵です!!! (2020年3月24日 21時) (レス) id: 2fd70573e8 (このIDを非表示/違反報告)
茄子(プロフ) - 小説も挿絵も何もかもがとても素敵でした……素晴らしい作品をありがとうございます…… (2020年1月25日 23時) (レス) id: 58113d68f6 (このIDを非表示/違反報告)
モルス(プロフ) - 涙が止まりません……こんな素晴らしい作品をどうもありがとう…… (2019年12月2日 14時) (レス) id: d7cc26133c (このIDを非表示/違反報告)
愛郎素(プロフ) - 香坂さん» 語彙力が!高い!!よもやよもやです……本当に書いていてよかったと感じました!これからも頑張ります! (2019年10月12日 14時) (レス) id: 56f98660a0 (このIDを非表示/違反報告)
香坂 - 言葉使いや書き方、表現に引き込まれました。一つの本を読み終えた時のような気持ちになり、とても良い作品だと心から思いました。このお話が読めてよかったです。 (2019年9月18日 17時) (レス) id: c6f322a1f4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:愛朗素 | 作成日時:2019年8月30日 21時

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