42話 ページ44
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その日は風もなく、音もなくひどく静かだった。
それでも、どこから来るのかわからない季節外れの凍てつく気配はずっと晴れなかった。
これは警告だと、正しい予感だったと思い出すのは半月の日だった。
______覚悟は出来ていますか?
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______本当に?
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______それでは、どうぞ。これは魘夢じゃないですよ。
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「老いることも死ぬことも人間という儚い生き物の美しさだ」
「老いるからこそ、死ぬからこそ、堪らなく愛おしく尊いのだ」
「強さというものは肉体に対してのみ使う言葉ではない。この少年は弱くない侮辱するな」
「何度でも言おう。俺と君では価値基準が違う」
「俺は如何なる理由があろうとも鬼にはならない」
「そうか______鬼にならないなら、殺す」
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「死ぬ…!!死んでしまうぞ!杏寿郎!鬼になれ!鬼になると言え!お前は選ばれし強き者なのだ!!」
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「胸を張って生きろ。己の弱さや不甲斐なさにどれだけ打ちのめされようと、心を燃やせ、歯を喰いしばって前を向け。君が足を止めて蹲っても時間の流れは止まってくれない 共に寄り添って悲しんではくれない」
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「母上……俺は上手くできましたか」
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「少年……君に頼みがある。この簪を藤山に住んでいるA、という女性に渡して欲しい……」
「言葉要らない……俺の代わりに渡して欲しい……」
A……俺は最後に、君の笑顔が見たかった。
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朝日と共に男の命はロウソクの炎のように消えた。
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託された思いと未来……赤い菊の簪を、炭治郎は握り締め、笑う亡骸を見て泣いた。
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おもち - 赤い花白い花の歌詞が入っていてとても惹き込まれましたー!とても素敵です!!! (2020年3月24日 21時) (レス) id: 2fd70573e8 (このIDを非表示/違反報告)
茄子(プロフ) - 小説も挿絵も何もかもがとても素敵でした……素晴らしい作品をありがとうございます…… (2020年1月25日 23時) (レス) id: 58113d68f6 (このIDを非表示/違反報告)
モルス(プロフ) - 涙が止まりません……こんな素晴らしい作品をどうもありがとう…… (2019年12月2日 14時) (レス) id: d7cc26133c (このIDを非表示/違反報告)
愛郎素(プロフ) - 香坂さん» 語彙力が!高い!!よもやよもやです……本当に書いていてよかったと感じました!これからも頑張ります! (2019年10月12日 14時) (レス) id: 56f98660a0 (このIDを非表示/違反報告)
香坂 - 言葉使いや書き方、表現に引き込まれました。一つの本を読み終えた時のような気持ちになり、とても良い作品だと心から思いました。このお話が読めてよかったです。 (2019年9月18日 17時) (レス) id: c6f322a1f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:愛朗素 | 作成日時:2019年8月30日 21時