12話 ページ14
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ここ付近、藤の木があまりない山にたむろう鬼の一掃には柱でも時間を有したらしい。
時間は黄昏時に差し掛かった時だ。
「煉獄杏寿郎だ!開けてくれ!」と玄関から大きな声が聞こえてきた。
この時間帯はもう縁側の襖を閉め、玄関の戸にも鍵をかけてある。
私は少年の食事作りに取り掛かろうとしていた手を戻して、玄関の鍵を開け、戸を引いた。
『わっ……』
その人は相も変わらず目を見開いて、口角をあげていたのだが……
およそ1週間振りに見た煉獄さんは赤黒く染まっていた。
私は思わず飛び退いてしまい、小さな声をあげた。
「久しぶりだな!悪いのだが風呂に入れて貰えないだろうか!」
淡い金髪も白い羽織りも軍服の首元も血を吸収している。何があったのかは明白だった。
『随分と斬って来たんですね』
「ああ!さほど強くはないのだが、数が多く、この有様だ」
『構いません、どうぞ。少年があなたに会いたがっていました』
少年は私が寝ている間に煉獄さんと親睦を深めたらしい。
少年は煉獄さんを見つけると、一瞬酷い顔をしたが、彼に挨拶をした。
確かに、その血まみれ具合と血の匂いは大人だって腰を抜かしてしまう。
私は替えの着物……と言っても偶然出てきた男性用の浴衣と、手拭いを持って、脱衣場に案内する。
沸かしたてのお湯の熱気と柔らかなお湯の匂いが脱衣場まで抜けてくる。
『血を流してから浸かってください』
出ていこうとすると、呼び止められる。
「あとこれを渡しに来た」
目の前に赤い物体を出されて、困惑する。
臓器、生首……という訳でもないが、真っ赤でよくわからない。
『これ、』
「さつまいもだ!」
返り血を浴びたさつまいもだった。
この人はさつまいもを持って戦っていたのか?
今度持ってくると聞いたが、わざわざさつまいもを片手に?
「夜道を歩いていた老人に妖怪だの祟り神だの勘違いされてな。お供え物だそうだ」
私は思わず、受け取ったお供え物を見て絶句してしまった。
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おもち - 赤い花白い花の歌詞が入っていてとても惹き込まれましたー!とても素敵です!!! (2020年3月24日 21時) (レス) id: 2fd70573e8 (このIDを非表示/違反報告)
茄子(プロフ) - 小説も挿絵も何もかもがとても素敵でした……素晴らしい作品をありがとうございます…… (2020年1月25日 23時) (レス) id: 58113d68f6 (このIDを非表示/違反報告)
モルス(プロフ) - 涙が止まりません……こんな素晴らしい作品をどうもありがとう…… (2019年12月2日 14時) (レス) id: d7cc26133c (このIDを非表示/違反報告)
愛郎素(プロフ) - 香坂さん» 語彙力が!高い!!よもやよもやです……本当に書いていてよかったと感じました!これからも頑張ります! (2019年10月12日 14時) (レス) id: 56f98660a0 (このIDを非表示/違反報告)
香坂 - 言葉使いや書き方、表現に引き込まれました。一つの本を読み終えた時のような気持ちになり、とても良い作品だと心から思いました。このお話が読めてよかったです。 (2019年9月18日 17時) (レス) id: c6f322a1f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:愛朗素 | 作成日時:2019年8月30日 21時