3話 ページ6
.
気づきたくないものに気付いてしまった。
視線を感じる。穴が開きそうな視線を感じる。
嫌な視線。
丸裸にされて、へたりこんで、目の前で大口を開ける鬼に一口で食べられるのを待っている気分だ。
視線の主は分っている。私は顔にかかった髪を耳にかけて、その方向を見やる。
頬杖をついて、目を愉悦に細めた鬼が私を見つめていた。
やっほー、と言わんばかりに目が合うと手を軽く振って、腕に絡みついていた大人の娼妓達をやんわり払って、立ち上がる。徳利と盃両手に歩み寄って来た。
「呑んでるかい」
そう飄々と口ずさんで、にっかり笑う。体のすぐそこに腰をおろしたので、体が強ばった。浴びせられた白々しい酒の妖気にうっとする。
男が来てから、私は一切の食事と酒に手をつけていない。
鬼を警戒しつつ、場の空気に合わせる。そんな度量私には無い。
『いいえ、あんまり進まなくて』
「おお、勿体ない。俺がお酌をしてやろう」
使われていない盃を手に取ると、私の手を握った。私は驚く。心拍が急激に内側から体を打ち付ける。握った手を握る手を私は即座につかもうとしたが、やめた。
平常心、平常心、平常心。心の中で唱える。
異様に長く伸びた鋭い爪が手の甲の血管を皮膚の上から撫でていた。
「鬼狩りなんだって?若いのに凄いねェ」
盃に溜まるお酒を啜る。
「夏の日みたいな女の子なのに、」
『酔ってますね』
「えぇ〜ほろ酔いだよ〜?」
『……教祖、やっていらして?』
「よく知ってるね」
『お店の子に聞きました』
「君、俺の事気になるのォ?」
『そんなところです』
意味合いは違いますけれど。
『目が……とても、
「君は、男の子に人気でしょ〜いいなァ〜可愛いなァ」
『随分と酔っていますよ』
「素面だよ、俺は。それでさ」
男が顔を私の顔の側に寄せた。
行動のひとつひとつが読み取れない。
あっと、盃を持った手を絡み取られて、酒器を吐く口に寄せられた。
鬼はにんまり笑う。神経を逆撫でする甘い声で囁かれた。
「それでさ_______俺の事、殺しちゃうの?」
.
615人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
叶(プロフ) - 更新待ってました!嬉しいです…! (2019年12月30日 15時) (レス) id: 64286635fd (このIDを非表示/違反報告)
はっか糖(プロフ) - 作品の雰囲気が素敵です… 有難うございます…!! (2019年11月8日 21時) (レス) id: 5853246d58 (このIDを非表示/違反報告)
愛郎素(プロフ) - ぶちゃさん» だ、大丈夫か!!!!!! (2019年11月4日 17時) (レス) id: 56f98660a0 (このIDを非表示/違反報告)
ぶちゃ(プロフ) - あっっっっっ(尊死) (2019年11月4日 16時) (レス) id: fb2695ac36 (このIDを非表示/違反報告)
愛郎素(プロフ) - オルガさん» 頑張ってます!!ありがとうございます!!返信遅れてすみませんでした!これからもよろしくお願いします! (2019年11月4日 15時) (レス) id: 56f98660a0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:愛朗素 | 作成日時:2019年10月27日 10時