検索窓
今日:3 hit、昨日:14 hit、合計:208,488 hit

35話 ページ38

.



朝日と同じ布団に入って、その夜は寝た。
風呂上がりのお互いの身体は温かく、良い匂いがした。

喉が渇いて真夜中に目が覚めた。時計は丑三つ時を指している。朝日は隣で寝ている。

そっと布団から抜け出して、部屋を出て、階段を降りた。



この花街に入って二ヶ月は経ったか、時より送られてくる伊黒さんの文がなければ曜日感覚が狂う。
そろそろ、昌幸さんに会えない理由をはぐらかすのもネタが尽きてきた。


『甘いの食べたい』


駅前の洋風な喫茶店でケイクが食べたい。
レモネードも飲みたい。そう私欲にくらめばくらむ程、喉の渇きを強くなる。

ここには酒とお茶と水しかない。

化粧水だけじゃ肌ツヤ誤魔化せないぞ……。



『嗚呼、レモネード……』



レモネードは、レモンの甘酸っぱさに砂糖の上品な風味に、スパイスのつんざく……

つんざく…………






鼻のつんざく






『血の匂いだ……』





血の匂いだ。

鉄の腐る匂いに、肉と骨を砕く音がする。

血と骨と肉の匂い。

人間の死体の匂いだ。




髪を留めた杭の形の簪を引き抜いて、構える。
壁に背をくっつけて血の匂いを辿る。




辿り着いた先は厨房で、微かに中が明るい。

包丁を忍ばせて肉を断つ音が聞こえる。



『(肉を調理している……?真逆、鳥の肉?いいや、……だったらこんなに血生臭くない……)』


呼吸を整え、暖簾を足速に潜って、私はその対象の口を押さえて跨り倒した。


『ッ?!店主、様』


「……ッ」


目を見開き、血塗れで包丁を掴むのは、鬼討伐を依頼した店主だった。


この人が鬼???


抑えた私の掌の下で、彼の口は何かを訴えようと動いた。


十分な警戒を払って、私は「声は小さく」と囁く。彼は泣きそうな顔で何度も頷いた。



『一体、どういう_____』


「私をお助けください……!!私、私は鬼ではありません。お願い致します……!!どうかご慈悲を、私は店を思って……!!」


『落ち着いて、落ち着いて、あなたが鬼ではない。助けを求めている事はわかりました。では、何故……あなたは、店の娼妓を切っているのですか』


厨房のまな板の上には華奢な腕がのっている。

大皿には内蔵、極め付きは生首だ。





「鬼狩り様……A様……私は多方に嘘をつきました。伊黒様にも、あなたにも。鬼が居るのは明白でした。この花街には鬼がいます」





この店には鬼が居ます。








.

全集中 氷の呼吸→←34話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (249 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
615人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , 童磨 , 冨岡義勇
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

(プロフ) - 更新待ってました!嬉しいです…! (2019年12月30日 15時) (レス) id: 64286635fd (このIDを非表示/違反報告)
はっか糖(プロフ) - 作品の雰囲気が素敵です… 有難うございます…!! (2019年11月8日 21時) (レス) id: 5853246d58 (このIDを非表示/違反報告)
愛郎素(プロフ) - ぶちゃさん» だ、大丈夫か!!!!!! (2019年11月4日 17時) (レス) id: 56f98660a0 (このIDを非表示/違反報告)
ぶちゃ(プロフ) - あっっっっっ(尊死) (2019年11月4日 16時) (レス) id: fb2695ac36 (このIDを非表示/違反報告)
愛郎素(プロフ) - オルガさん» 頑張ってます!!ありがとうございます!!返信遅れてすみませんでした!これからもよろしくお願いします! (2019年11月4日 15時) (レス) id: 56f98660a0 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:愛朗素 | 作成日時:2019年10月27日 10時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。