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32話 ページ35

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夜は深い_______。
夜風に混じって、情交の匂いと声が漂う。点々と灯る花街の明かりを下に、私は屋根の上にいる。





『……居た、』





血を被ったような頭が、格子の女達に愛想を振りまいている。

そして誰もいなくなった裏路地を通るその姿を屋根の上から狙う。
頚目掛けて、日輪刀を振るう。


「よッっと……!」


軽く交わされた。対の金の鉄扇が日輪刀を弾き返す。私の頭上からの奇襲は呆気なく終わった。わかってはいたけどね。しかし、花街にかなり居るが、もっと激しい訓練を積んだ。
この程度で息は切れない。

私は連撃を惜しみなく出す。

「もう嘘つくのはやめたの?俺はもうちょい続けたかったぜ?」

酔った様子はない。酒樽一杯飲まないと酔えない、というのは些か嘘ではないのだろうが、辛い酒の匂いがあたりに散らばる。
強い酒だ。あるこーるはまだ分解されないらしい。



『飲んだみたいだから、相手をしようと思ったの』


「え???_____そういう意味だったの……???」



鬼は拍子抜けした顔をする。下がり気味の眉がさらに下がって、眦は残念そうに歪む。

どうやら、この鬼は「遊んであげる」という私の台詞を間に受けて楽しみにしていたのだ。
酒を飲み干せば、私を……抱けると。私が、その……えっちい意味で遊んでくれる、と。



『拾ノ型……氷氷流転!!!』



凍った赤い目の龍が鬼に襲い掛かる。
今度こそ、命乞いはしない。確実に殺す。仕留めたい。



「騙された、騙された。てっきりそういうお誘いなのかと」


『都合のいいイカれた頭』


「はは、それくらい俺は君に本気なんだぜ?」


『やめて欲しい』




「楽しくて楽しくてしょうがないが、名も知らない氷の呼吸の君ぃ。菩薩に誓って俺はここの花街荒らしてないぜ?今日初めて来た」


『待て』


「わん」


『うえ…ッ。そうじゃなくて、攫ってないの?誰一人として?』


「君と菩薩に誓おう。今日は下見だよ、偶然君にあった」



本当さ。
沈黙が訪れる。私は考えた。

信憑性も信頼性もこの鬼にはない。元より鬼だ。

しかし、この鬼が言うことが本当ならば、ここに居るのはダメだ。



「手伝おうか?」



鬼はにっこりと笑った。



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(プロフ) - 更新待ってました!嬉しいです…! (2019年12月30日 15時) (レス) id: 64286635fd (このIDを非表示/違反報告)
はっか糖(プロフ) - 作品の雰囲気が素敵です… 有難うございます…!! (2019年11月8日 21時) (レス) id: 5853246d58 (このIDを非表示/違反報告)
愛郎素(プロフ) - ぶちゃさん» だ、大丈夫か!!!!!! (2019年11月4日 17時) (レス) id: 56f98660a0 (このIDを非表示/違反報告)
ぶちゃ(プロフ) - あっっっっっ(尊死) (2019年11月4日 16時) (レス) id: fb2695ac36 (このIDを非表示/違反報告)
愛郎素(プロフ) - オルガさん» 頑張ってます!!ありがとうございます!!返信遅れてすみませんでした!これからもよろしくお願いします! (2019年11月4日 15時) (レス) id: 56f98660a0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:愛朗素 | 作成日時:2019年10月27日 10時

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