17話 ページ20
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喉、乾いた。
嗚呼、穀潰しかよ。死んだかと思った。いや、死んだ方が決まりよかった。
私を食べないで、なんて戯言だ。この頬をひっぱたきたい。
朝日が私を見下ろしていた。
南中高度は過ぎていない、まだ午前中か。それよりも何時間気を失っていたかが問題だ。
近場の木までほふく前進で這いずって、寄り掛かる。ゲホッと乾いた咳が出た。血の味がする。
無意識下の全集中・常中のおかげか、傷口の止血はある程度できていた。だが、痛いものは痛い。なんせ傷口は一度凍傷以上に凍り付いて、解凍された。
傷の具合は今まで一番、悲惨で解凍したあらびきの肉状態だ。
ガサガサと音がした。
『もし。そこにどなたかいらっしゃいますか』
私は猫撫で声を出した。
こうすれば山中に住む男は寄ってくる。
やぶのざわめきが近付いてくる。
「うわ!大丈夫ですか?!」
現れたのは隠の男であった。
言葉では表現出来ない安堵感が溢れる。
「芥川 Aさんですか?」
『はい。救助依頼出たんですか?』
「昨日出ました」
かくかくしかじか。
私は二日間林の中で意識を飛ばしていたらしい。
全く軟弱な体だ。
お師匠様や兄弟子に知れたら、なんて叱責を受けるか。
あの山の森のマタギが作成した罠をひたすら下る訓練から始まるのは、何がなんでも嫌だ。
あの憎たらしい鬼の顔を思い出して、嗚呼、悔しいと呻いた。
殺されていないところを見ると更に怖い。
佐藤という隠。佐藤、さとう、砂糖。くだらない連想遊びに嫌気がさす。
応急処置を施され、おぶられた時だ。隠の佐藤さんの首に合わした腕が丁度、喉仏にあたって鈍い痛みが走る。
鈍痛に痺れて、ばっと腕を見やった。
『ヒぇ……』
腕に、「おはよう、また遊ぼうね」そんな
私の生まれ育った地方にはそれなりに言い伝えがあった。
自分の姿を口外されない為に鬼が人間の体のどこかに蚯蚓脹れの文字を走らせる。脅しである。口外すれば、お前の命はない。蚯蚓になって干からびて死ぬか、鬼が食べに来る……そんな田舎の恐怖伝説。
……妖怪を最近見てしまった私には、言い伝えは今になって効果手目で項垂れだ。
「どうかしました?……顔色更に酷くなってますけど、」
『確実に酷くなってますね、色々と』
私は肩に顔を埋めた。
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叶(プロフ) - 更新待ってました!嬉しいです…! (2019年12月30日 15時) (レス) id: 64286635fd (このIDを非表示/違反報告)
はっか糖(プロフ) - 作品の雰囲気が素敵です… 有難うございます…!! (2019年11月8日 21時) (レス) id: 5853246d58 (このIDを非表示/違反報告)
愛郎素(プロフ) - ぶちゃさん» だ、大丈夫か!!!!!! (2019年11月4日 17時) (レス) id: 56f98660a0 (このIDを非表示/違反報告)
ぶちゃ(プロフ) - あっっっっっ(尊死) (2019年11月4日 16時) (レス) id: fb2695ac36 (このIDを非表示/違反報告)
愛郎素(プロフ) - オルガさん» 頑張ってます!!ありがとうございます!!返信遅れてすみませんでした!これからもよろしくお願いします! (2019年11月4日 15時) (レス) id: 56f98660a0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:愛朗素 | 作成日時:2019年10月27日 10時