別れなよ、兎に角。そして俺と付き合えばいい。 (ページ16)

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１３話ページ16

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軽薄そうなこの男(鬼)に嫌気がさす。

切り付けた頬にざっくりと走る切り傷。
横目に傷を見て、伝う血を舌先で舐めとった。

見せつける仕草だ。

嗚呼、色男のツヤのある仕草だ。しかし、巨悪の女食いの鬼である。

私は飛び上がって、空中でクルクル回った。
回し蹴り。からの、回し払いに足を上げて蹴りつけた。

私は決定的瞬間を探る。
首の守りが固いので、胴体なり足なり腕なり、斬って動きを鈍らせたい。
氷を氷で弾いて防いで打ち返す。重い鉄扇を刀で受け止めた。

両者、適度に攻めて適度に守る。
積極的に技を出せば、技の疲労で動きが鈍くなる隙をつかれて尻尾を握られる。

恐れていた長期戦にもつれ込み、血が沸騰するように熱くなってきた頃だ。

私は決定的瞬間を見つけた。

鬼が私に氷の花を飛ばそうと、扇を払った時だ。
今までで一番、大きな隙だった。

疲弊した脳みそとかじかんだ体は一瞬生気を取り戻す。

決着なんてついてはいないのに。

取っていた型をやめて、私は脇腹を目掛け刀を振り払う。
刀を通して肉を裁つ感覚が揺れとなり伝わる。

刀を進めて行く時間がやけにゆっくりだった。

鬼は笑みを崩さない。むしろ愉快だと言わんばかりに善人そうな顔で笑うのだ。目を合わせて、鬼の瞳孔が大きく開いて、そこには虹色の私がいる。

嗚呼、嗚呼、罠だ。
懐にわざと私を招きこんだのだ。

気づいた頃にはもう遅かった。完膚無きまでの手遅れで、ぬけぬけと私は罠に見事に引っかかった。

距離を置こうとしたけれど、刀が抜けない。

鬼の脇腹を見れば、そこは凍り付いていた。
日輪刀を脇腹ごと凍らせて、私を逃がすまいと留めている。

「判断が遅い」

師範の声が頭の中、響いた。師範に頬をぶっ叩かれた痛みを思い出して、刀を離して飛び退くが、鬼は私の鳩尾を深く蹴り押した。

『あ"ぁ"……ッ！！！！』

白銀世界の木々は氷も同然で、固い氷柱に背中がぶつかった。

苦しい！！痛い！！息が、できない！！

ゴハぁっと口から血の塊が飛び出して、呻き散らす。

「気の毒だなあ、痛いよね、うんうん」

鉄扇片手、私の愛刀片手に鬼は妖怪の破片を踏み付けて、近寄ってくる。

「怖いなあ、そんな目で見ないでよ。君の方が鬼らしいよ？」

だが、そう言って鬼も血反吐を吐いた。
鬼の肺は私の呼吸に負けて、圧迫されて血を吐いた。

「まあ、いい。君を食べて回復すればいいさ」

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