百日草 (ページ36)

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黒side

友達に戻るだけ…か。

こういうとき、つくづく髙地の寛大さを思い知る。俺の凝り固まった頭では、どうしても仕事のことやら手術のことやら、ネガティブな方にばかり頭が働いてしまうから。

俺らがそう簡単に北斗のこと見放すと思う？SixTONES舐めんな？

そう言いながら、ちょっとだけいじわるそうな顔で笑う髙地。たぶん一生敵わない存在。

そこからはトントン拍子に事が進んだ。マネージャーに連絡がいき、メンバーに連絡が行き、事務所に連絡が行き。

他のメンバーも、すぐにでも会いたいと言ってくれたらしいけど、今夜は遅いからと明日来ることに。

そんな中で、俺に唯一の訪問者。

「北斗。」

開かれた扉の前に立つ滝沢くん。若干やつれた様な気がする。まあその原因は紛れもなく俺なんだろうけど。

正直合わせる顔もない。勝手にいなくなって、迷惑かけて、今度は突然現れたと思ったら癌で入院中ですだなんて。

「本当にすみませんでした。」

ひたすら頭を下げる。臆病な俺は怖くて顔を見られない。

「北斗。」

「……はい。」

静かな、落ち着いた声色の滝沢くん。その声に静かな怒りが織り混ざってる気さえして、返事の声が震えた。

「会えてよかった。」

「へ？」

思わず顔を上げた。目の前には、綺麗な涙を流しながら俺にそう言った滝沢くん。

色々と、必要以上に心配をかけたようだった。生きてるのかさえ不安に思わせたらしい。

無駄な心配をさせまいと思った俺の行動が完全に裏目に出たってことだ。

俺はただただ謝ることしかできなくて、滝沢くんはそんな俺を包むように微笑んでいた。

「そうだ。わざわざ会いにきた一番の目的を忘れてた。」

「目的…？」

「北斗。あの辞表は捨ててもいいか？」

辞表か。

「…はい。こんな俺でも、居ていいって言ってくれた人がいたから。」

「それが聞ければ俺は十分だ。今後のことはまたゆっくり話そう。身体、気をつけてな。また見舞いに来るから。」

滝沢くんが出て行った扉を意味もなく見つめる。段々頭がぼーっとしてきて意識が遠のいていくのがわかる。

今日はいろんなことがありすぎた。一度は諦め、手放した人生。俺の生きがいが再び俺の元に戻ってきた。

更新大変遅くなりすみません💦