百日草 (ページ32)

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黄side

北斗に会ったとしても追い返されるかもしれないこと。なんの病気なのかは北斗が言わない限り言うつもりはないこと。どんな姿でも驚かないこと。

お兄さんからいろんな注意をされた。そんなことを言うってことは、北斗はよほど体調が芳しくないのだろう。良くない想像ばかりが膨らんで、ほぼ意識がないまま歩いてた。

「ここ。北斗の部屋だから…行ってあげて。多分強がってるだけで、意固地になってるだけで、みんなに会いたがってるはずだから。」

涙ぐんでるお兄さんに何を言ったらいいのか分からなくて、力強くうなづいて扉に手をかけた。

病室にしては比較的広い部屋の真ん中。背もたれが少し上げられたベットに寄りかかる北斗が驚いたような顔でこっちを向く。

「えっ、……は？」

点滴に繋がれて、頰が痩けた白い顔をした北斗。最後に会ってから、たった1週間と少ししか経ってないのに。こんなにも変わってしまうなんて。

「北斗っ」

「なんで、なんで髙地がいるの。」

北斗の目から涙が溢れた。

「帰って。それでもう2度と来ないで。俺の話は誰にもしないで。早く俺のことなんて忘れてっ！」

泣きながらそういう北斗に、俺は素直に従うべきなんだろうか。こんな苦しそうに訴える北斗に、俺は何をしてあげられるんだろうか。

正解は分からない。わからないからこそ、俺は今目の前で壊れそうな北斗にしてあげたいことをする。

「北斗。そんな寂しいこと言うなよ。」

ベットに近づいてそっと抱きしめる。男同士で気持ち悪いとか言われるかもしれない。けれど、それでもいい。そんなことどうでもよくなるくらい、今の北斗は脆くて危うく見えた。

「北斗の苦しいこと、話してくれない？俺ら中学からの仲じゃん？」

何を言われたとしても受け入れる準備は出来てる。どんな衝撃的な話を聞かされたとしても、北斗を失うことと比べたら他愛もないことだから。