百日草 (ページ28)

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黒side

うとうとして、眠れそうになるとふと目が覚めてしまう。たまに痙攣が起こってうっかり泣きそうになる。そんなことを一日中繰り返していたら枕元のケータイがけたたましく鳴りだした。

マネージャー、事務所、メンバー。メッセージやら電話やら通知がどんどん溜まっていく。

どうやら辞表は無事届いたらしい。

今、この瞬間。俺はSixTONESじゃなくなった。

ケータイの電源を落として、ベットサイドの棚にそっと仕舞う。もう忘れよう。戻りたいとか、またあいつらに会いたいとか、そう考えてしまうしまうこの気持ちも一緒に棚に仕舞えたら楽なのに…そんなことを思ったりした。

兄が、毎晩仕事終わりに来てくれる。

毎日毎日、遅くなってごめんと言いながら病室に通ってる兄。年度末が近く仕事の忙しいこの時期に、兄の手を煩わせていることが心苦しくて仕方なかった。

「おれ、一人で大丈夫だから。そんな無理して来なくても…」

「心配ぐらいさせてよ。せっかく面会時間フリーの特別室なんだから。」

「そっか。ごめん…」

俺は自立した大人になりたかった。子供の頃、たくさん我儘を言って家族を振り回してきたから。ちゃんと仕事が軌道に乗ってからは、家族に孝行して生きていこうと決めていた。なのに。

夜になっても寝れない俺に付き添ってほとんど睡眠をとらずに出勤していく兄を見るのが苦痛だった。

「北斗くんいよいよ手術だね。明日の朝転院するけど支度、どうかな。」

「兄がやってくれてます…俺は何にもできなくて。」

「北斗くんは必死に病気と闘うことになる。お兄さんに甘えられるときは甘えてておこう。ね？」

「…」

「北斗くんは本当に強い。努力を惜しまないし自分でなんでも出来ちゃう人だ。だからこそ、この現状がしんどく感じてしまうかもしれない。でもね、一緒に闘ってくれる人がいることは北斗くんの力になるから。」

優しい兄はきっと来なくていいと言っても顔を見せてくれるんだろう。明日からはごめんじゃなくてありがとうと言いたいと思ったりして。