百日草 (ページ25)

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黒side

「よし。行こ。」

俺の最後の仕事の日。終日YouTubeの撮影で、最後の思い出には最高のスケジュール。

これが終わればみんなオフで、オフが明けたら俺はもう居ない。

お菓子ばっかり食べてる髙地。

相変わらず半目で寝てる樹。

某モンスター集めゲームに勤しむ京本。

髙地にちょっかいかけて楽しんでるジェシー。

来て早々お弁当選んで幸せそうな顔してる慎太郎。

急に恋しくなって、こっそり写真を撮った。思わず頬が緩んだのは誰にもバレたくないけれど。

仕事なのか、プライベートなのか分からないくらい楽しんだ撮影。今日も今日とて押しまくってなんとか日付が変わる前に撮り終えた。

ああ。終わってしまう。２週間、来ないでくれと祈り続けた終わりの瞬間が、目の前まで迫ってきている。

いつもはあんまりちゃんと言えないけど、今日は言わなきゃ後悔すると思って、一人一人にバイバイを言った。

またね。

って言われて、こころが締め付けられる。またねって返事することはできなくて

「うん。じゃあね。」そう誤魔化した。

家に帰ってきた。しばらくの間、この家とはおさらばだ。入院って、よく考えたらしたことない。よく体調を崩す方ではあったけど、家で数日寝込めば治ってるような子供だった。

名残惜しくてなかなか出掛ける気になれない。そんな気持ちも振り解いて荷物を手にした。

入院用の荷物と辞表を手に家を出る。ようやく慣れてきた東京の街を歩き回った。深夜なのにそこそこの人の波。さすが東京だなぁと思う。

Jr.時代よく行った撮影所。6人で未来の話に花を咲かせた居酒屋…。

深夜から、気が済むまで歩き回った。気付けばそろそろ日が昇るような時間。

最後にやらなきゃいけないことがある。

「これで終わり。ちゃんと自分で終わらせよ。」

ポストに辞表を投函した。

これでもう後戻りは出来ない。