百日草 (ページ24)

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○ ページ24

黒side

辞表を書かなければならない。

自分で決断したはずなのに、いざ、真っ白な便箋を目の前にすると揺らいでしまう。

なんて書いたらいいのだろう。

「っはぁ。おれ、SixTONESじゃなくなるんだ…。」

1枚目の便箋は涙でぐしゃぐしゃになった。

荷物をまとめて家から運び出す。入院で必要そうなものはスーツケースに詰めて、その他は比較的病院に近い兄の家に置かせてもらうことになった。

「なんか終活みたい。」

いつ死んでもいいように準備をしているような気がしてなんとなく嫌だ。兄は手伝うと言ってくれたけれど、泣きながら荷造りしてることなんて見られたくなくて断ってしまった。

少しずつ少しずつ部屋からモノが減っていく。それに釣られるように心の整理もついてきて、入院の日を5日後に控えた今日、ようやく辞表を書き上げた。

いちファンとして応援していく…か。

昔から、個人仕事でストレスが溜まってメンタルが不安定になるとよく、俺がいなくなったSixTONESの夢を見ていた。

置いていかないでっ！おれのこと忘れないでっ！

そう叫ぶ自分の声で目が覚めるという最悪の夢見。

それが現実になろうとしている。横並びの位置から眺める5人の姿がではなく、画面の向こうの世界に生きる5人の姿。

「おれ、SixTONESなしで生きてけっかな。」

悔しい。なんで俺が癌にならなきゃいけないんだろう。

その思いはどうにも拭えなかった。

「北斗。本当にやめるの？メンバーに言わずに。」

「もう。何度も言わせないで。せっかく覚悟決めたんだから。辞めるし、言わない。SixTONESは俺と違ってこれからもでっかくなってくんだから。」

SixTONESが国民的アイドルになる頃、俺も生きていられたらいいな。それが、誰にも言えない、俺の密かな願い。