百日草 (ページ21)

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黒side

結局、生検というのをしない限り、なんの種類の癌なのかは分からないらしい。

5年生存率数%のものから寛解するものまで色々。

もうなんでもいい。生きられるのならなんでも構わない。そう思うようになってきた。そろそろ、決断しなければならない。

「もしもし兄さん。ちょっと話したいことあって。今夜時間いい？」

一人では抱えきれない。久しぶりの連絡がこんな内容になってしまったのは申し訳ないけれど、俺は兄に助けを求めた。

「北斗！会うのは久しぶりだよね。急にどうしたの。」

「いきなり来てもらっちゃってごめん。話さなきゃならないことあって。」

「何。そんな神妙な顔して…怖いんだけど。」

「…おれ、仕事辞めようと思ってる。………癌、なんだ。」

空間ごと凍りついてしまったかのように、お互い微動だにしない。

「は？え、どういうこと…」

「脳に腫瘍が見たかったの。」

兄さんは泣き崩れた。俺を抱きしめて、見たことないくらいたくさん泣いていた。

そこからは質問攻めにあって、これでもかってくらい心配された。そりゃそうだ。たった一人の弟が癌だっていうんだから。

「このツアーが終わったら治療に専念する。治っても治らなくても、この世界には戻らない。」

戻らない、というより戻れない。芸能界で、アイドルとして生きていくことの難しさは痛いほどわかってるから。

「まだ、兄さん以外には誰にも伝えてないんだ。メンバーとか事務所には、癌だってこと伝えないことにする。詳しいことは伝えずに辞めたいってことだけ言おうと思ってるんだ。無駄な心配かけたくない。」

「俺は伝えたほうがいいと思うけど、北斗がそのほうがいいと思うならそうすればいい。俺はとめないよ。とりあえず、一人で苦しまずに俺に言ってくれて本当にありがとう。」