百日草 (ページ20)

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黒side

なんかあった時に事務所にバレたくなくてこの病院を選んだけど、まさか癌だと言われるとは思わなかった。

事務所に言わなければならないのだろうか。ツアーだってある。決まってる仕事だってある。言ってしまったらきっとやらせてはもらえないだろう。

メンバーにだって。伝えなきゃならないのは分かってるけど。

「言える気しねぇ…」

俺のせいであいつらが辛そうな顔してるとこ見たくない。俺のせいでSixTONESの仕事を邪魔したくない。

誰にも言えないまま１週間が経つ。ツアーも始まってるけれど、合間のふとした瞬間に心ここに在らずになってしまうことが増えた。

そんな時に先生からの電話。

明日きて欲しい。

嫌な想像ばかりしてしまう頭を振り切って、その場の仕事のことだけを考えるようにする。

仕事終わりに病院に向かう。もっと早く来るはずだったのに押しまくって日が暮れてしまった。

「あぁ。北斗くんいらっしゃい。忙しいとこごめんね。」

「いえ、こちらこそ時間合わせてもらっちゃってすみません。」

「ううん。ちょっと、今後のお話がしたくてね。」

今後の話って。俺が生きるか死ぬかの話か。

「北斗くんの腫瘍はね、グリオーマっていう種類の可能性が非常に高い。」

グリオーマ。その名前を知らなかったらどんなに幸せだっただろうか。

「…グリオーマと言われたら命が危ないと思ってください…。」

「え？」

「そうネットに書いてありました。おれ、ﾀﾋぬんですね。」

泣きたくなかったけど勝手に涙が出てしまう。

「北斗くん。それは違う。たしかにグリオーマには死亡率が高いものも多い。だけどもちろん全てがそうってわけではない。完治することだって十分あり得るんだよ。」

泣きじゃくる俺の背中をさすりながらそう言った。やめてほしい。希望を持たせないでほしい。もう、絶望したくないのに。