百日草 (ページ15)

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黒side

リハを抜けてトイレに駆け込んだ。

「はぁっ、なんでっ。」

今まで朝しかならなかったのに。よりによってなんでリハ中に。

いや、元々朝しか起こらない保証なんてなかったんだ。なのに俺はなんて無責任なことを。

もしこれがLIVE本番だったら。数万人のファンの皆さんの目の前だったら。多分大丈夫など甘いことは言ってられないんだ。

病院に行こう。いつまでも逃げてたってしょうがない。治るもんなら早いとこ治してもらおう。とにかくメンバーには迷惑をかけられない。ツアーに支障があってもいけない。

冷静にそんなことを考える余裕が出てきて、そのうち左腕の震えはおさまった。早いとこ戻らないと、要らぬ心配をかけてしまう。俺は駆け足でステージに戻った。

「北斗！よかったぁ。急に出てったから心配したじゃん。」

「ん。ごめん。止めてしまってすみませんでした。」

スタッフさんにも謝って、リハは再開される。

「北斗？お腹でも痛かった？顔色良くない。」

「まぁそんなとこ。押してんのにごめんね。やろ。」

慎太郎に不穏な顔をさせてしまったのが心苦しい。様子を伺うようなメンバーの視線も、なんだか申し訳なさすぎてしんどかった。

リハが終わり、一度家まで送ってもらってから改めて家を出る。

もし万が一何かあった時、事務所にバレたら厄介だ。そう思ってあえて、事務所御用達の大学病院ではなく、少し離れた総合病院を目指した。