百日草 (ページ5)

今日:21 hit、昨日:17 hit、合計:158,953 hit

○ ページ5

青side

「２週間。北斗のことを世間に隠しておけるタイムリミットだ。それまでに、北斗を見つけたい。北斗とちゃんと話がしたい。頼む。手伝ってくれ。」

俺らに許された猶予は２週間。You Tubeと少クラの撮り貯めも底をつきるし、ラジオの生放送だってある。

北斗が見つからなければ、彼の体調不良による休止が発表されること、そして俺らもグループ活動は休止することが決められた。

「俺らどうなるんだろね。」

最年少の重い言葉に、俺はなんにも返せない。

「心は休まらないだろうけど、体だけでも休めとけ。無理はするな。」

そう言って滝沢くんが出ていく。やはり、俺らに会話はない。ジェシーと慎太郎の笑い声を聞かない日なんて今までにあっただろうか。

その夜、どうしても家に帰りたくなくて、マネージャーさんに無理言って北斗の家の合鍵を貸してもらった。電気も付けず、北斗が多くの時間を過ごしてきたであろうリビングに寝転んだ。

何もないただただ広い部屋。なんにもないくせに、北斗の匂いが部屋中に溢れていて俺は初めて泣いた。

リビングの真ん中で寝転んでケータイを開く。

電話をかけた。

こんな時間に電話してくんなよって怒ってほしかった。うるせえなぁって言ってほしかった。なのに。なのに…

「俺からの電話は出るんじゃなかったのかよっ……いい加減でろよっ！」

聞き飽きた無機質な音声案内ばかりで、聴きたい北斗の声が届くことはなかった。