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「…よし」
Aはふうっと息を吐いて扉の前に立つ。Aの管轄下にある部隊の扉の前である。
今日は、いつもの私じゃない。
今日の私は、高級で特別な女(ひと)なのよ。
そう強く念じて、くびれに沿って絞った黒い軍服をするりと撫でる。女性用の軍服は、クローゼットの奥底にしまった。今着ているのは、男性用の予備の軍服である。さらに新調した靴は針のような鋭い黒のピンヒールで、Aの身長は180近くまでにもなっていた。
化粧はあまりしていない。きらびやかな顔なので、濃い化粧は逆に下品に見えるからだ。髪の毛は金色のバレッタで緩く纏めている。金と黒で身を包んで、引き締まった・隙のない女になった。
しかしここまでしても尚、Aの身体は微かに震えていた。
心臓が破裂しそうなくらいに鳴っていて、期待と不安とで目眩がしそうなくらいだった。
震える手に力を込めて、扉を押し開けた。
カツ、カツ、カツと冷たいヒールの音が大きく響く。軍服の衣擦れひとつさえ聞こえてこない。Aは背筋を伸ばして立ち止まる。なんだかいつもより静かだった。
「おはよう諸君。…昨日の合同訓練に続き、来月隣国との模擬対戦を行うこととなった。詳細は後日説明するが、模擬対戦に伴い、明日から戦闘隊員は戦術及び陣形を考案する時間を訓練時間に含むものとするため、報告書などの諸業務を一時休止とする。報告は以上。本日も業務に励むように」
「はっ」
ドッ、という音がなって、幾数もの拳がそれぞれの勲章に添えられる。またAを見る幾数ものその目には、明らかに前とは違う色が写っていた。Aはその色に、驚きと、少しの欽慕を見た。
Aは高鳴る心臓を抑えながら、部屋を後にした。
そして扉に寄りかかり、ズルズルと腰を下ろした。
うまく行った！
感激で、身体中真っ赤になりそうだった。
扉越しに聞こえるざわめきさえ、心臓がうち震えるほど嬉しかった。やっぱり、気の持ちようなのだ。変わろうと思えば、人なんてすぐに変われる。Aは笑った。しかし、扉に耳をくっつけて、すぐに黙ってしまった。
「おい見たかA隊長のこと…」
「めっちゃ派手だったな」
「派手っつうか、ドギツかった」
「あれじゃね？ついに総統と寝たんじゃね…ブフ」
「…枕昇格ってこと？っブハハ、ヤバ！総統趣味悪！」
「アハハ…間違いねェや」
「俺笑いこらえんの大変だったんだからな…ギャハハ」
*
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飼い主の姉(プロフ) - pnさんが夢主に狼狽する姿や描写が可愛くて好きです〜…！！🫶 無理しない程度に更新頑張って下さい！ 応援しております (12月5日 14時) (
レス) @page12 id: 5ee2b54502 (このIDを非表示/違反報告)
_maimai0101_(プロフ) - ｽｷﾃﾞｽ……夢主ちゃん頑張って〜〜〜〜！！！！生姜焼き太郎さんの世界観好きすぎます……！！！続き楽しみです🫶更新待ってます〜！！！！！ (10月16日 17時) (レス) @page8 id: cc01457125 (このIDを非表示/違反報告)
田中(プロフ) - 読みやすくて、とても面白かったです。続きも楽しみです🫶🏻🫶🏻 (10月16日 13時) (レス) @page8 id: d6054e066b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：生姜焼き太郎 | 作成日時：2023年10月15日 11時
