Ep.8 試験 ページ9
そうやってAが拾われたあの日から随分と時間がたった。気づいたときには後輩なんてものが居て、壁外調査は尽く留守番だったAだが、訓練兵団よりは短期であれど、長期に渡るリヴァイの指導を受け随分様になった。
今日はその最後のテストである。
「次、立体機動装置。準備してこい」
腕を組み仁王立ちのリヴァイに、今までのテストを難なくくぐり抜け自信の付いたA。言われた事はこなせる子供である。言われたとおりにすればできるのに。なんて他が聞けば怒鳴り散らかすことだろう。
それができたら苦労はしない。
「できました。ベルト合ってますか?」
「あぁ。問題ない」
腰やら太腿やらに巻かれたベルトをリヴァイに引かれ何度声を上げたか。締めがゆるいだとか場所が違うだとか。体勢だけなら情事を思わせるような勢いで組み付かれて。
「で、えっと模型倒せば良いですか」
「否。鬼ごっこといこう。俺を捕まえてみろ」
ブレードの扱い自体は問題ないと言われた。だから純粋に立体機動装置の精度をみたいのだろうが今まで散々体力テストまがいなことを続け、正直なところもう体力は尽きている。それなのに相手は今までそこで立っていただけで体力も消耗してない万全な状態で。
む、無理だ……
思わずAの顔が歪んだ。Aは引取られてからというもの、随分と人間らしくなった。未だに人からの指示を待つ癖やそれを遵守する思考は残ったままだがそれでも十分人らしくなった。そうリヴァイは頷く。なにより、これを育てたのが自分というのが良い。
「で、捕まえるってたって……危ないでしょ?ワイヤーが絡まります」
「絡まったら俺がどうにかする。ガキは難しいことは考えるな。俺を捕まえることだけ考えてろ」
最後に締めくくる言葉は命令形で、それはAにとっては拒否権が無いものだ。
「分かりました。怪我しても知りませんからね」
先に飛び立つリヴァイの背を追いかけ、ワイヤーを同じ木へ打ち込んだ。同じ動きを同じように繰り返していけば離されることはないはずだがガスの扱いは何倍もリヴァイが上だ。同じように動こうとすればすぐガスが無くなって墜落するだろう。
「クソ、早いっ……」
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作者名：訓練兵【エラーコード：0330】 | 作成日時：2023年3月27日 11時
