俺はただの石ころだ。 (ページ8)

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Ep.7　衣装ページ8

馬子にも衣装とはよく言ったもので、あんなに汚かったガキも、風呂に入れて適当な服を着せれば随分様になった。なにより、俺より背が低いというのが良い。とリヴァイは思う。

　最近自分の周りには自分より背の低い奴が居なかったのだ。強いて言えば女性隊員だが、それと比べ始めてしまえばそれこそプライドがズタズタである。

「隊長。こちらの服は」

「俺のだ。袖を捲くれば着れるだろ」

　それはくれてやる。と押し付けた服を指さしながら言い放った。もう血塗れで使えそうにもないが、この少年が着ていた服は随分と上等な物で、クライシス家の子供として育てられていたと言わずもがな分かった。

　使用人の子供でもない。それは確かだった。使用人がこんな上等な服を支給されるわけが無いからだ。

　殆ど傷のないきれいな肌は荒れを知らず、こんな時世にも関わらず随分と滑りの良い皮膚だった。

「隊長の物をそのまま頂いてしまうのはよろしいのでしょうか」

「一着くらいどうとでもなる。あのクソみてぇな臭いの服はもう着るな。捨てろ」

　わかりました。返事は今回も即答だった。聞き分けが良すぎていっそ怖いがリヴァイにとっては自分の意見が通りやすいのはある意味で楽だった。

「分かり…ました」

　始めて言い淀んだ。だが返事が了承であることには変わりない。Aからしてみれば自分に残る母君の物である。いくら汚れていて着れなくなったとしても残しておきたかったのだ。
　しかし捨てろと言われてしまばAは逆らえない。やはりリヴァイからしてみれば無駄なものなのだ。

「はぁ、捨てたくねぇなら言え。察しろって方が馬鹿馬鹿しい」

「はい」

　唇を噛み締めている。気を使わせたとでも考えているのだろう。察しの悪い自覚のあるリヴァイではあるが事、負傷や恐怖には天性とも言える才を発揮する。なんだかんだ実のところは分かってはいるのだろう。ただ深く考えないようにしているだけだったりするのかもしれない。
　まぁ、それを我々が議論したところで無駄だろうて。語り手を返そう。

　

「次が無いよう精進いたします」

　そう返すAに思わず顔をまた顰めてしまい、怖がらせたのは言うまでもない。