俺はただの石ころだ。 (ページ21)

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Ep.18　時期ページ21

そういう時期なんだからそっとしておいてあげなきゃ。とハンジが的はずれなことを述べてそれをリヴァイが鵜呑みにする。

「ほう。つまり躾直せということか」

　ただでさえ散らかった狭い部屋が更に狭くなったような錯覚を覚えた。入口側にリヴァイが居るため部屋から出ることも叶わず、まさかに袋の鼠であるし、なんとかスペースを確保した椅子の周りにまで来られているのだからもう手の届く距離である。

　いくらAがリヴァイに直々に訓練を仕込んでもらって相当に成長しているとしてもあくまでそれは新兵としては。の話である。
　この人類最強には、身長以外で勝るところなど何ひとつもないのだ。

「ごめんなさ、い。邪魔になるかと思って切ってみたんですが……やっぱり素人がやるべきじゃないですね」

　ナイフ一本では流石に切れなかった分が残って変な長短の付いた髪型を指先で弄びながら自嘲する。

「怒ってますか？色々、勝手にしてしまって」

「いや、それはもういい。いつかはこうなると分かっていた」

　とりあえず髪を整えよう。と手を引かれた。よく移動のときに腕を掴まれて手を引かれる事が多いが自分がここに来たときは後ろを着いていくばかりだったらしい。所かまわず着いていくから腕を引かれたら着いていくというルールが決まったのだが。

　この年になってもそれとは如何に。流石にもうわかるぞ。

　

「兵長。兵長は僕の髪、どう思ってましたか」

「オイオイオイ、わざわざ言わせる気か」

　分からんか。と振り向きざまに頭を掴まれる。後頭部に、回された手のお陰で無理に屈まされる。

「あはは、はい。分かりましたよ」

「そう、か。なら良い」

　変な事を言ってごめんなさい。と額に口付ければ満足気にまた歩みを進めるのだから、正直なところ周りが言うほどリヴァイという男は扱いにくい人だとAは思わない。

「ねぇ兵長」

「どうした。まだ何かあるのか」

「いや、兵長って優しいですよね」

「バカ言え、俺は元から結構優しい」

　そうでしたね。と笑ってみせておけば、満足したようで歩き始める。内容のない会話をいつも繰り返している。

　それを突っぱねないのはそれこそ優しさだろうし、一番尊敬できるところだろうて。否、勿論強さも尊敬に値するけれど。

　やはり人としてなら武力は褒められたものではないのだ。