俺はただの石ころだ。 (ページ20)

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Ep.17　髪ページ20

あれからハンジに髪を切ってもらった。もっと適任は居ただろうし毛先が不揃いでチクチクする。でも首元がスッキリして頭が軽くなった気がした。

　もう頭をふるたびにバサバサ動く髪はない。女みたいだと触られることもない筈。

「兵長に怒られちゃいますかね」

　適当に括った髪をナイフでバサリと切っただけの不揃いな髪を指でいじりながらハンジに笑いかけた。ハンジが切ったのだから共犯というよりもはや彼女も犯人である。怒られるなら一緒に怒られてほしい。

「まぁ、A。貴方のことだからね。許可も無しに切っただなんて知ったら３日は言われるんじゃないかな」

「で、ですよね」

　今更ながら後悔した。顔を合わせられない理由が増えてしまったじゃないか。

　あぁもうどうしてくれよう。と膝を抱えていればドアの開く音。ノックをしないのはこの兵団では一人だけ。

「おいハンジ。Aは……ここに居たか」

　ズカズカと散らかった本や何かの書類を押しのけて埃から離れようと少し周りの片付いた、Aの今座っている椅子へ近付いてくる。

　どうしよう。思ったより早くリヴァイが探しに来てしまった。想定外である。こんなに早く探されてしまうなんて。

「おいA。どうして逃げる。それにその髪……」

　初めて見るような歪んだ顔で見下された。座って低くなった目線では自分の方が低い。髪と同じで２年の間に随分伸びた背はあっという間にリヴァイを抜いて今では彼の頭に顎を乗せることが可能な程である。

「どうしてお前は俺の話を聞かない」

「もしかしてA……反抗期が来たんじゃない？」

　後ろから声がした。反抗しているつもりは無いのに。そもそもリヴァイはAの親ではない。親代わりに育ててくれたがそれも二年前のことだ。たった２年で義理親と認識するのは流石に失礼だろう。

　というかそもそも親子と言うには歳が近すぎる。

「そんな事は無い筈ですが……」

　色々な意味を込めて否定した。同意を求めるようにリヴァイを見上げる。だが視線の先のその顔はどうして嬉しそうだった。