俺はただの石ころだ。 (ページ17)

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Ep.14　叱咤ページ17

言えるものなら言ってみろと言わんばかりの顔である。怖い、と言うよりも許されるにはどうすれば良いかという思考が頭を占めた。

「兵長に、認めてほしかったんです。討伐数が有れば、僕も兵長の隣に立てると思ったんです。僕に対する噂はよく耳にしています。だから、貴方に迷惑をかけたくなくて……でもかえって迷惑をかけてしまっているみたいですね。ごめんなさい、いっそ早く巨人の餌に」

　どんどん話がズレた。口を開けば止め処なく卑屈な言葉が溢れ、自虐が止まらなかった。こんなことが言いたいわけではない。心配されていることは分かっている。心配されるくらいに自分の力がないのが悪い。

　戦わなければ勝てない。誰の言葉だったろう、記憶にはない筈だがどこからか降って湧く言葉。

　我らが神様がそう言い聞かせたのだろうか。

「誰が言った。何をどうすればお前を巨人のあの臭ぇ口にぶちこむ話になる」

　今ならまだ間に合うから考え直してほしい。と気づけば背中に回っていた腕に引き寄せられ、彼の頭が首元に埋められた。少しくぐもった声がした。

　
「でも、僕を含めた隊列がもう組まれてて、索敵陣形なら人手が多い方が良くて……」

「正論はクソほど聞いた。お前から聞くまでもねぇ。分かってんだよ、んなこと」

　どうしてもお前だけは駄目だ。と背中の布が握り込まれた。押し付けられる体に圧されて苦しい。

「大丈夫ですよ。きっと。だってあの人類最強直々に教わったんですから」

　何が何でも生きて帰ります。

　いつからか自分より低くなった彼の頭を抱え込んで言い聞かせた。自分が生きていられる保証はない。初陣である。だけれど、始めて分かった人の顔。始めて覚えた顔を歪ませてしまうのはどうしても嫌だった。

　

「だから、遺書の場所も教えてあげません」

　精一杯の強がりで、唯一の反抗期だった。