Ep.13 念願 ページ16
「ねぇハンジさん。僕、次の壁外調査に参加出来るらしいです」
心底嬉しいという顔をしてAはハンジに報告した。なぜ報告先がハンジなのかと問われれば一応所属的にはハンジ班だからである。モブリットとも十分親睦を深めたらしい。
まあ、Aはハンジの奇行種ぶりに対して個性的だ以上に思うことがないためモブリット的には困ったときにハンジを押し付ける良い相手だと思っている程度だろうが。
「え！？よくあのリヴァイが許可したねぇ」
あの保護者気取りが。と散々な言われようである。別にそれに対して可哀そうだとかは考えないようにしておこう。いつも通りである。
「いえ、兵長は団長とまだ談判中です」
「ああ、どおりで」
今日は早めに夕食を済ませておいた方が良いね。そういわれて食堂へ手を引かれた。戸を開いてすぐに香る今日のスープの香りに食欲がそそられるなんてことは無かったが、スープに浸したパンを口に放り込んでいればリヴァイを怒らせたことなど忘れてしまっていた。
「美味しかった」
腹が膨れる感覚はやはり幸せだ。と頬を緩めて、あとは寝るだけだから体が温かいうちに布団に入ってしまおうと食堂から逃げ出した。
「A。オイ、無視してんじゃねぇ」
自室の扉に手をかけたところで、後ろから手を掴まれた。丁度ドアノブにかけた手の上に。変な汗が背中を伝う。
きっと怒られる。
そう考えただけで手が震え、膝が笑った。
「ごめ、なさい」
「なぁAよ。俺は許可していないぞ。今日も駄目だといった筈だ」
どういうつもりだ。と掴まれた手に力が入った。
「でも、団長は良いと」
「俺は許してない」
怖くて振り向けないが、声に纏われた怒気に涙が出そうで、足が廊下のアップリケになったみたいに動けるわけもなくなって。
「部屋入るぞ」
押されるがままに部屋へヨタヨタと足が進む。今まで動かなかったのが嘘みたいだ。
なんやかんや一番に信頼しているのは彼だったりするのだろう。
「相変わらず何もねぇ部屋だな」
なんとなく置かれた簡素なベットに座らされて、その隣に大して柔らかでもないベットが揺れる勢いで座り込まれる。肩に回された腕が逃げることを許してはくれない。
「まずはお前のクソほどの役にも立たん弁解を聞いてやろう。言い訳はなんだ」
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作者名：訓練兵【エラーコード：0330】 | 作成日時：2023年3月27日 11時
