Ep.12 会話 ページ13
「A。そんなに壁外調査に行きたいのかい?」
「はい。どうしても、同行したいのです。僕も役に立たせてはいただけませんか?」
団長室。威圧感の有る大きな椅子から見下されて、萎縮こそしないけれど声が震えた。自分だって頑張りたかったのに。自分だって皆みたいに頼られたいのに。
いつも駄目だと抑えつけられて。
……やだなぁ。
「そこまで言うなら新兵と同じ配置であれば許可しよう」
「エルヴィン!!Aはまだ外に出せるような力は無い!!」
怒気を孕んだ声で叫ばれた。後ろから肩を掴まれ力任せに引かれた。体幹には自信があったが残念なことに力ではどう足掻いてもリヴァイには敵わない。まあガキの身体なのだからそんなものだろう。
「やってみなければ分からないだろう」
何を考えているか分からない顔で、いいや違う。影が落ちて、逆光で、見えない顔である。更には声色も分からない物であった。
「ありがとうございます。団長」
だがそれでも、団長が自分の壁外調査の参加を認めてくれた事は奇跡とも言え、幸せとも言えた。
そう、認めてもらえたと思えば酷く喜びを覚えたのだ。
承認欲求。それが最も強いのは幼少である。何でもかんでも親に、見て。と騒ぐあの年頃はその欲の最たるものなのだ。
否、成熟していない理性のお陰で剥き出しにされた欲というだけだろうか。
だが、それでも良かった。自分は子供だ。それでいい。今はそれが一番落ち着く。
「おい、A。何勝手に決めてんだよ。俺は許可した覚えはねぇが」
駄目だと言った筈だ。そう肩を押さえたその体制のまま言われた。だが今Aは少し、否かなり高揚していた。気分が良いとは違うがきっとそれが一番近い表現であろう。
「団長から了承を得ました。僕はハンジさんの班で壁外調査に」
「俺が認めねぇ。おいエルヴィン。こいつは今日の試験に落ちた。分かるな?使えねぇ愚図なんだ。そんな奴お荷物になるだけだ」
「リヴァイ。君は……」
一体何を恐れているんだ。
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作者名：訓練兵【エラーコード：0330】 | 作成日時：2023年3月27日 11時
