Ep.11 好奇 ページ12
探究心。好奇心。それらに置いて、彼女より上のものは見たことがない。
「ねぇ!!A、貴方どこに居たの!?せっかく今日の成果を聞いてもらおうと思ったのに!!」
さて。スープが冷める前に飲んでしまおうか。
ガタガタと肩を掴まれ揺らされているし、なんだか唾が飛んできているが得に気にしないようにしておこう。そうだ。何も見ていない。Aナニモミテナイ。
「え!?無視するの!?いいじゃん聞いてよ!!いつも聞いてくれていたじゃないか!!」
「……はぁ、食べながらで良いなら聞きますよ。食べたら僕お風呂行きますからそれまでしか聞けませんが」
「本当かい!?ああやっぱり聞きたいんだねA!!そんな顔をしていると思っていたんだよ!!」
鼻息が荒い。距離も近い。いやはや、食欲が失せるだろうて。
だが大変面白い話が聞ける。
目を潰せば動けなくなる事、再生能力には個体差がある事、夜間の活動も同様。
消化器官がない事、生殖器官もない事。
食事を必要としない事、日光だけで生命を維持している事。
身体が軽すぎる事。
どれもこれも興味をそそられるものばかりで、何時だって彼女の仮説は認識の飛躍が凄まじく、正直夢物語のような気持ちを味わった。きっと発想の展開が苦手な自分だからだろうけれど。
「で!!Aはどう思う!?」
「え?ぼ、僕の意見なんて参考にならないと思うよ?」
馬鹿な自分は彼女のような意見は出ない。発想ができない。産み出せない。何も。
「そんなことない!!私は、君の意見を知りたい。今までこんな熱心に私の話を聞いてくれたのは君くらいだ。そんな君だからこそ、分かることも私の話を聞いて感じたことも、あるはずだろう??」
「凄いな、としか考えられなくて……考えるとか苦手で。ハンジさんみたいにはなれないです」
「そっか、じゃぁ気が向いたらで良いよ。いつか聞かせくれよ〜」
また明日。と手を振り去る。ハンジは楽しそうだがAはそうは言えない。食堂に残され、ひとり。わずかに残ったもう具のない冷えたスープを掬った。
「……味しないや」
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作者名：訓練兵【エラーコード：0330】 | 作成日時：2023年3月27日 11時
