俺はただの石ころだ。 (ページ2)

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Ep.1　邂逅ページ2

助けてくれ、死にたくない。

　そう泣き叫ぶ少年を尻目に母君の手を握った。

「俺はあんな馬鹿と違って泣きません。だから目を開けてください。今日はいつもより勉強が捗ったのです」

　母君はどうやら相当お怒りらしい。まだ口を聞いてくれないのだから。

　あまり無視されると僕だって傷つくのに。

　思わず眉を下げてしまう。いつも笑顔を絶やすなと言いつけられていたのに。こんなだから母君が怒るのだ。

　
「あぁっ、あ"がぉあ"ぁ"ぁ"!!!!!」

　少年が一際大きく叫ぶ。同時に上から雨が降った。俺が知るより随分と黒く、赤く。汚い雨。あまりにいきなり降るものだからびしょ濡れになってしまった。

　口は閉じていなかった。

　だからじわりと滲んだそれが口に入り込む。随分鉄臭く、苦く、不快な味だった。

「母君、今日は随分と不思議な天気です」

　まるで血のような雨が振りました。

　返事はやはり無い。でもどこかで理解した。これは駄目なやつだと。

「おいガキ!!退け!!削ぐぞ!」

　ばひゅん。と音を立てて太い糸が塔に突き刺さる。そこに吸い寄せられるように移動していく人。

　その時の自分には鳥に見えたその人。

　後に命の恩人だったと知るその人。

　俺の神様になったその人。

　はじめからきっと、出会うべくして出会った。

　必然だと、運命だと思った。

「おいガキ。生きてるか」

「たす、けて……」

　母君。俺ははじめて貴方以外に意見し

　我儘を言いました。