少年と夕焼けの王国 ページ33
▽
「ん？ 誰かいたような気がしたが…まあ気の所為か」
扉の向こうでほっと息を吐く。
上手くまけたようだ。
咄嗟に隠れた部屋は、どうやら王族、しかもそれも女性の衣装部屋だったらしい。
日本では見たことの無い柄や素材の服が所狭しと置かれている。そのどれもが王族用らしく、素晴らしい意匠やデザインで、服なんかに興味はなかったけど思わず見とれてしまう。
「ここは王妃の衣装部屋だ」
「すごく綺麗だね」
「気に入ったのか？」
俺は頷く。
そんな俺を見てレオナくんは言った。
「着てみるか？」
「え？ 今なんて言った？」
「着てみるかって言ったんだ。ちょっと待ってろ。幾つか見繕ってやる」
「いやいやいいよ！！ だってこれ王妃様の…」
「王妃がなんだ、お前は神だろ」
「いやそうだけど、てかそもそも女性物だろ！俺は男だから着られな……！」
口を塞ぐように見事なコントロールで投げつけられたのは、きんきらきんの薄い服。しかもピンク。
俺は抵抗した。
が、部屋着のTシャツと短パンはあっという間に剥がされ、あれよあれよという間に幾つもの服に着替えさせられた。
＊
「似合ってるぞ」
「…うわ、すごい……」
着させられたのは、伝統的な柄が裾にあしらわれたローブのような筒状の服。そこに、服を留めるためなんだろうけど、宝石があしらわれた花のブローチが付いている。
色は白・金・茶色・緑に統一されていて、どことなく神聖さが醸し出されている。
極めつけは白と薄いエメラルドグリーンが差し色で入ったフェイスベール。
鏡に映る俺は正しくエキゾチックな美女だった。
鏡に向かって色々ポーズを取ってみる。
動く度に換気性のいい生地の服の袖がひらひら揺れて、気分が良くなる。
「気に入ったようだな」
「うん！ すごい、ありがとう、レオナ。まるで違う人になったみたいだ」
フェイスベールの花の装飾がしゃらんと揺れた。
「ほんとうにありがとう、レオナ」
前に会った時、俺は顔の傷を隠せたと思っていたけれど、獣の性質を持った目では茂みからでも普通に見えてしまっていたようだ。
けれど、レオナは見えていたということを一言も口に出さなかった。
言わないけれど、言わないだけでちゃんと理解してくれていて、俺のためにこのベールを用意してくれた。
その心遣いが心の中にじんわりと染み込む。
鏡を前に黙り込んだ俺をレオナはただ静かに見守っていた。
。
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きさらぎはるか(プロフ) - 茶茶さん» その言葉が最高に幸せです！遅筆で本当に申し訳ないですが、できる限り頑張ります。読んでくださってありがとうございます！続編もお楽しみ頂けると幸いです！ (2020年10月2日 19時) (
レス) id: 25ad4ecffd (このIDを非表示/違反報告)
きさらぎはるか(プロフ) - アイトさん» 前から読んでくださってるとは本当に嬉しいです。ありがとうございます。遅くなりましたが続編作成致しましたので、そちらもお楽しみ頂けると幸いです！コメント励みになります！ (2020年10月2日 19時) (レス) id: 25ad4ecffd (このIDを非表示/違反報告)
茶茶 - 遅れました?!続編おめでとうございます！！この作品めっちゃおもしろくて、大好きです！これからも、無理せず更新がんばって下さい！ (2020年9月28日 22時) (レス) id: 0a249ceab0 (このIDを非表示/違反報告)
アイト - 作者様...爆死、ドンマイです。前々からこの作者が大好きで読ませて頂いていました。続編おめでとうございます。これからも楽しみにしています。夢主君ガンバレ...!! (2020年9月23日 18時) (レス) id: 480ca03fdd (このIDを非表示/違反報告)
S a t h i(プロフ) - いっぱい稼ぎますね( ^ω^ ) (2020年9月23日 18時) (レス) id: 34748ec2aa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きさらぎはるか | 作成日時：2020年8月1日 19時
