ヤンデレ本丸に変化 ページ5
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「“引渡しのお知らせ”……久々だね」
「そうだね。断っちゃいなよ、そんなん」
「断れないよ。だって、みんなと一緒にいられなくなっちゃうよ」
封筒にはでかでかと達筆な文字で、『刀剣引渡しに関する注意事項』と書かれている。
「どんな子が来るんだろうね」
「…」
「加州？……清光？」
加州は後ろから、離さないというように、自分より一回り小さな主を抱きしめた。
力が強かったのか、う、と主の息が詰まる音が聞こえるが、意にも返さず、ただただ、
「俺の事捨てないで。俺の事だけ見ててよ。
主、どっかへ行かないで」
泣きそうな声で訴えかける加州。
優しい温もりが、自身を抱きしめる腕に触れた。
「絶対捨てないよ。一生、一緒だよ」
ね、清光？ と、主はまるで天の御使いのような微笑みを浮かべる。
それにしばし加州は見とれ、何度も何度もその言葉を反芻した。
「新しい刀剣に夢中にならないで。俺の事ほうっておかないで」
「もちろん。清光のこと、愛してるよ」
嗚呼、主。罪深き主。
こうして、主は俺の全てを奪っていくんだ。
加州は腕の力を緩めると、改めて主をその胸に抱き抱え直した。
「主、なんか変わったでしょ」
「変わってないよ。でも、もし変わったとしたらーーー」
澄んだ黒玉の瞳が、加州を射抜く。
「ーーーそれはみんなのせいかな。」
「主、」
「主！！ 見て！花たくさん取ってきたよ！」
“主、やっぱり変わった”ーーーその言葉は、障子を思いっきり開けて飛び込んできた大和守安定に遮られてしまった。
「大和守。すごいね！ こんなに咲いてたの？」
「うん！ 主が喜ぶと思って全部切ってきた！」
「でも、大和守。これ、全部茎から折れちゃってるから花瓶にさせないよ」
「…そう？ 主、嬉しくない…？」
「ううん。嬉しいよ。ただ、今度からは花の付け根から切らないで、ちょうどいい枝の位置で切ってね。それから、また花が咲くように、少しは残しておいてね」
うん、わかった！ と、大和守は子供のような笑顔で頷く。
これは浮き花にしよう、と主は大和守に大きめの花瓶に水を入れてくるように頼んだ。
「違う、変わったのは“俺ら”の方だ」
大好きな沖田くん。共に戦った大切な仲間。
その全部を塗り替えたのは、他でもない“この人”だった。
仕事の帳簿に目を通し始める主を横目に、加州は主に更なる愛を誓った。
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作者名：きさらぎはるか | 作成日時：2021年2月18日 18時
