それを愛と呼ぶ ページ3
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「「「いただきまーーす!!!」」」
刀剣たちの賑やかな話し声が大広間に響く。
今回の一番の話題はもちろん「主のこと」。
もう定番になった、「主の○○が可愛かった」だの「主の○○な姿を見た」だの、“主自慢”は話し尽きることがない。
燭台切はといえば、いつもの位置ーーー主の隣に居座り、眼帯に密やかな光をともらせながら、にこにこと微笑んで主のお世話に全力を尽くしていた。
「今日もおいしいよ。燭台切、ありがとう」
「君が喜んでくれるのが一番だよ。作った甲斐があるってことだね」
味が隅々まで染み込んだ煮物に、見た目からもよだれが出そうなほど見事な焼き魚。すっかり燭台切の作るお味噌汁に舌は馴染んでしまった。
そろそろ甘味に差し掛かるというところで、短刀の一人が声を上げた。
「ねえ、燭台切さん。この前のお餅。余ってないの? また食べたいんだけど」
燭台切の瞳がゆっくりと細められた。
「今日は生菓子にしてみたんだ」
「この前のお餅、本当においしかったからさ、また」
「また今度ね」
短刀の声に被さった一言。
短刀が燭台切をみつめるが、燭台切の思考はもう
「お前、言ったろ。燭台切は注文なんて聞いてくれないって」
「でもさあ、いくらなんでも…、余ってるかわかったら自分で出してきて食べるのに…。」
しかしその短刀に思わぬ幸運が訪れた。
「この前のお餅、また食べたいなぁ」
偶然か短刀たちのことを見ていたのか知らないが、主がそうつぶやいた。
その時だった。
「そう!それならこの前の余りがいくつかあるからもってこようか」
短刀や、他に燭台切にリクエストしていた者たちは開いた口が塞がらなかった。
こいつめ…と思う気持ちがじくじくと湧いてくるのも不思議ないことではないだろう。
明らかに主と自分たちの扱いが違う。しかしその豹変ぶりに、文句を言うものは一人もいなかった。
全ての刀の愛を一心に受ける“主”。
彼が
「このお餅、何が入ってるの?」
「それは主への
「もう、またそんなこと言って。」
「僕も大好き。いつもありがとう燭台切」
その言葉を受け、燭台切は誰にも見せたことがないような極上の微笑みを浮かべるのだった。
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作者名:きさらぎはるか | 作成日時:2021年2月18日 18時