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「すわってよ、」
『うん、』

鼻の頭を赤くした彼の隣に腰かける。
このベンチ
忘れもしない、あの時のベンチだ。

そうして彼は、私の肩に頭を載せる。

「俺さぁ、不器用だからさぁ、Aに迷惑ばっかかけとるよなぁ、」

初めて聞く彼の弱音に、慌てて横を向く。

『そんなこと、』

「今日だってさぁ、本当はこの後、社長に教えてもらったお洒落なBARに行って、指輪渡すつもりだったのにさ。」

「俺、柄にもなく緊張しちゃって、つい酒飲みすぎちゃって...」
『そんな、私は十分ーー』


楽しかったよ


そう言いかけて、ハッとする。


ゆび、わ?


『ちょっと、指輪ってどういうこと!?』
「え?なんでA知ってんの?」
『し、知ってるも何も、、今自分で、』

すると彼は、マジか〜と呟き、ポケットの中から、小さな黒い箱を取り出した。

「ん、」

手を出せ、とばかりの彼に怪訝な目を向けていると、無理やり左手を取られて、手袋が脱がされる。

「わぁ、つめてぇ」

けらけらと彼が笑う。

『当たり前でしょ、どんだけ歩いたと思ってんの』

私は動揺を誤魔化すように強く言い放った。
すると不意に、手の甲に冷たい何かが落ちる。

「え、雪? マジ?」

指輪を嵌める直前で、彼は手を止めて空を見上げる。

わぁ、雪だ。
久しぶりに見た。

ふわりふわりと、ひとつずつゆっくりと空から落ちては、確かに2人の指先を冷やしていく。

冷たいリングが左薬指の奥まで入る。

雪に触れたそれは、指の根元で冷たくなり、存在を主張していた。

「これからもよろしく、」

そう言って抱きついて、私の頭を撫でる彼に、呆然とする。

これって、


『プロポーズ?』
「そうだよ」
『...そうな、の?』

ぽろりとひとつ、涙が零れる。

「え、ちょ、なんで泣きよるとw」
『いや、そりゃあなくよ...』

ずる、と鼻水を啜る。
隣で彼がふふ、と笑った。

「さ、帰ろ!」

.

.

「...は、」

横に眠る女を見て、DJ銀太は驚愕した。
指輪が嵌められている。

「...ちょ、A!」
『んあ〜...なに?』
「そ、それ!」
『え?』

まだ寝惚けている彼女とは裏腹に、焦りはどんどん膨らんでいく。


やっべぇ、昨日の記憶がねぇ


あれだけ準備した指輪、俺はどうやって渡したんだ
いつ、どこで、何の言葉を添えて、

記憶がねぇ!!!

でも...


『ふふ、似合ってる?』
「う、うん、」

幸せそうな顔をしているAがいるから、
まぁ、いいか...

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はな(プロフ) - ゆりりんさん» こちらこそありがとうございます!どんどん騒いじゃってください笑これからもよろしくお願いします(;_;) (2019年10月29日 16時) (レス) id: dc8bc131de (このIDを非表示/違反報告)
ゆりりん - ありがとうございます!!騒いでしまいました(笑)(笑) これからも、更新ガンバって下さい! (2019年10月26日 23時) (レス) id: 3aa826c620 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりりん - 生理ネタ、書いてほしいです!! (2019年7月27日 0時) (レス) id: 3aa826c620 (このIDを非表示/違反報告)
はな(プロフ) - あおさん» ありがとうございます!これからもがんばって書いていくので、よろしくお願いします! (2019年2月18日 17時) (レス) id: e48151f9dc (このIDを非表示/違反報告)
あお - 終わり方すごすぎ!まるのめっ↑ちゃキュンキュンしたんだけど マジこの作品好きだわー (2019年2月15日 19時) (レス) id: 66f0193b88 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:はな | 作成日時:2019年2月2日 18時

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