ゆめのあと ページ38
「ドーム、なくなった」
『え?』
ぱりん、と皿が割れる音がする。
私はそれを確認する余裕もなく、後ろにいる青髪の彼を見た。
『今、なんて、』
「...先方から連絡あって、ドームは貸せないらしい」
床に落ちたそれを確認する余裕もないまま、私は青髪の彼を振り向いた。
社「...ごめん、」
『し、社長が謝ることじゃないです。やめてください。』
いつになく弱気な彼に近寄る。
それがドッキリや冗談でないことくらい、一瞬で分かった。
『皆には、連絡したんですか』
社「今終わったところ」
彼は落ちた皿の破片を拾い始める。私はまだ、何もかも整理できなくて、立ち尽くしたまま、その光景を見つめていた。
『...社長、』
社「ん?」
優しい、だがその裏に大きな悲しみを抱えたような笑みで、彼が私を見上げる。
『飲み、付き合いますよ』
社「...ありがとな」
両手に皿の破片を抱えた彼は、私の横を通り過ぎると、破片をゴミ箱に捨てて、2階へと消えていった。
これが、私と彼らの、夢の終わり。
の、はずだった。
.
.
『社長、私、ちょっと実家に帰りますから』
2度ノックした後、私はドアの前でそう声をかけた。返事はなかった。
皿が割れたあの日から2週間。
彼は部屋に篭り、あまり出てこなくなった。
脇「...行くよ」
隣にいる彼にブラウスの裾を少し引かれ、仕方なくそこから立ち去る。
.
脇「大丈夫やろか」
行きの新幹線の中で、彼は寂しげにそう呟いた。
『...もう2週間経つとよ』
脇「え?」
『社長が部屋にこもってから』
脇「そうなん?」
彼はおにぎりを頬張りながら、うーんと唸る。
脇「でも、社長のことだから、タダじゃ終わらんと思うけど。」
『そうやけど...あの憔悴っぷりは、さすがに心配になるわぁ...』
.
「きゃ〜!ありがとうございます!」
黄色い声援を浴びている彼を遠くから見つめる。
さっすが、"MG脇"といった所か...
『随分とにやけていらっしゃるようで。』
脇「...いつから見とったと?」
『声かけられたところ』
脇「最初やん!!」
はぁ、と困ったように頭をかく彼をちらりと見る。
すると、彼はその視線に気づいたようで、首を傾げた。
脇「なん?」
『...いや、別に』
"随分と有名になったものだなぁ"
口にしそうになって飲み込む。
あれほどの炎上でも、やっぱりみんな注目してるんだ...
『ねぇ、私あのラーメン屋さん行きたい!ほら、エルフの近くにあった!』
脇「お、いいやん!店長さん元気やろか...」
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はな(プロフ) - ゆりりんさん» こちらこそありがとうございます!どんどん騒いじゃってください笑これからもよろしくお願いします(;_;) (2019年10月29日 16時) (レス) id: dc8bc131de (このIDを非表示/違反報告)
ゆりりん - ありがとうございます!!騒いでしまいました(笑)(笑) これからも、更新ガンバって下さい! (2019年10月26日 23時) (レス) id: 3aa826c620 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりりん - 生理ネタ、書いてほしいです!! (2019年7月27日 0時) (レス) id: 3aa826c620 (このIDを非表示/違反報告)
はな(プロフ) - あおさん» ありがとうございます!これからもがんばって書いていくので、よろしくお願いします! (2019年2月18日 17時) (レス) id: e48151f9dc (このIDを非表示/違反報告)
あお - 終わり方すごすぎ!まるのめっ↑ちゃキュンキュンしたんだけど マジこの作品好きだわー (2019年2月15日 19時) (レス) id: 66f0193b88 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はな | 作成日時:2019年2月2日 18時