社長にお返しされてみた ページ13
社長から送られてきた地図をもう一度確認する。間違いない。
『ここだ...』
地下に続く階段を降りていくと、正面に黒いドアが見える。
このドアの向こうで彼は待っているはず。
少しだけ緊張して扉を開けると、カウンターの椅子に腰かける彼が見えた。
「おぉ、来た来た」
嬉しそうな手を振る社長の横に腰かけ、コートを脱ぐ。
『オシャレなお店ですね』
「だろ〜」
静かな店内をぐるりと眺める。
お酒の瓶が沢山並んだ店内が少しだけ懐かしく感じた。
「今日はお連れ様がいらっしゃるんですね」
店員の男性がニッコリと笑って私を見つめた。
「いつも1人でいらっしゃるんですよ」
『へぇ、社長こういうとこ女の子と来そうなのに』
社「ここは連れてこんて決めとるけん。Aが初めてだよ、ここ来るの。」
"私が初めて"
そんな彼の言葉に、ついつい舞い上がってしまいそうになる。悪い癖だ。
そんなに頻繁に一喜一憂した所で、何も変わらないのに。
『社長、どのくらい呑んでるんですか』
「うーん、かれこれもう5杯目かな」
『結構呑んでますね...』
少しだけ頬の赤い彼の横顔を見つめる。
バーには人がいないからか、彼はふわふわの髪をさらけ出していた。
適当に頼んだ1杯目のグラスを煽り、こくりと飲み干す。
「おかわり?早かね」
『ええ、まあ』
「これ、飲んでみーよ」
そんな社長の言葉につられて、私も彼が飲んでいるものと同じものを注文する。
『ん、うわぁ...これかなりアルコール高くないですか?』
「まぁね。そうでもせんと、お前も俺も酔わんやろ」
『まぁ、そうですけど』
社長がグラスの氷を指でクルクルと回す。
『で、なんで私と呑もうとおもったんですか?』
「えー、別に気分。」
バレンタインから1ヶ月、結局彼は何も言わなかった。私のこの感情に気づいてるくせに。
思わずため息が漏れる。
『社長って狡い人ですよね』
「えぇ、悪口ならふぉいにでも言って」
『いいえ、言います』
社長が指でグラスの氷をくるくると回す。
『どうせ気づいてますよね』
「なにを?」
『私が...』
「Aが?」
『...言わせないで下さいよ』
2杯目のグラスを飲み干す。
ペースなんてもちろん考えていない。
『私が、』
「Aが俺の事を好きなこと?」
ほらね、やっぱり
『...相変わらずいい性格してますね』
「褒め言葉やね」
社長は、ふふ、と薄く笑うと、私の分のグラスも一緒に注文した。
291人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
はな(プロフ) - ゆりりんさん» こちらこそありがとうございます!どんどん騒いじゃってください笑これからもよろしくお願いします(;_;) (2019年10月29日 16時) (レス) id: dc8bc131de (このIDを非表示/違反報告)
ゆりりん - ありがとうございます!!騒いでしまいました(笑)(笑) これからも、更新ガンバって下さい! (2019年10月26日 23時) (レス) id: 3aa826c620 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりりん - 生理ネタ、書いてほしいです!! (2019年7月27日 0時) (レス) id: 3aa826c620 (このIDを非表示/違反報告)
はな(プロフ) - あおさん» ありがとうございます!これからもがんばって書いていくので、よろしくお願いします! (2019年2月18日 17時) (レス) id: e48151f9dc (このIDを非表示/違反報告)
あお - 終わり方すごすぎ!まるのめっ↑ちゃキュンキュンしたんだけど マジこの作品好きだわー (2019年2月15日 19時) (レス) id: 66f0193b88 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:はな | 作成日時:2019年2月2日 18時