【イナズマイレブン】氷雪のエクリプス Ⅱ (ページ43)

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第92話ページ43

怒涛の3分間が嘘だったかのように、イプシロンの消えたピッチは静かだった。
彼らの姿がなくなったことにその場にいた全員がぽかんとしていると、木暮の好プレーを思い出した音無が「木暮君すごい!!」と声を上げる。

「偶然でしょ! 所謂ビギナーズラックですよ」

試合前の態度が余程気に入らなかったのか、目金は木暮を認めようとはしなかった。その言葉に音無はムッとして口を尖らせるが、瞳子が「…偶然だけかしら」と言ったので「そうですよ…! あれこそ木暮君の実力なんだと思います!!」と嬉しそうに表情を明るくさせる。

「褒めすぎですよ音無さん!! まったく…。ちょっと可愛いからって母性本能を擽られちゃったってやつですか?」「違いますよ!!」分が悪くなった目金と彼に噛み付かれた音無の言い合いを他所に、瞳子は不安げな面持ちで校舎を見上げた。

「監督、どうかしたんですか?」

「いいえ。何でもないわ」

『…?』

木野に声を掛けられ、瞳子はハッとしていつもの無表情に戻る。イプシロンの消えたピッチに意識が向いていた如月は、木野の声を聞くまで瞳子の様子には気付かなかったので2人のやり取りに首を傾げた。勿論、瞳子が浮かない顔をしていた原因など知る由もなかった。

＊

「やったね、木暮君!!」

試合が終わり一安心していたところに音無がやって来て、木暮は変な声を出した。振り返ると音無と円堂がおり、「お前、奴らのシュートをカットしたんだぜ!」と笑顔を見せる。これまで誰かに褒められたことのなかった木暮は、2人の反応に驚いてぱちぱちと瞬きした。

「やっぱり、意外性があったね!」

「ああ! 結構やるもんだな」

「ほんとだよね! 補欠にしとくの勿体無いよ!」

試合前は木暮の参加に否定的だった土門や塔子にまで賛頌され、彼は気の抜けた顔で彼らを見上げる。それでも実感の湧いていない様子だったが、円堂に「…てことだ! お前、すごいぜ!!」と言われて「…へへ」と笑顔になった。

「そうさ。俺、すごいんだ! うっしっしっし…!」

『…ふふ』

あまりにも嬉しそうな木暮の様子に、これまで暗い表情で震えていた如月から自然と笑みが溢れる。誰もそれには気付かないまま、漫遊寺イレブンは「大したものだ、木暮!」「見事だったぞー!」と口々に称えながら駆け寄った。しかし彼らが突然「うわあｯ!!」と声を上げて地上から消えてしまったので、雷門イレブンは驚いて口が開いてしまう。

「木暮ー!!」

落とし穴の中から垣田の怒号が飛んだ。