【イナズマイレブン】氷雪のエクリプス Ⅱ (ページ37)

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第86話ページ37

「頑張ってね、木暮君!」

雷門中のユニフォームに着替え、靴紐を結ぶ木暮に音無が声を掛ける。彼はそれを無視して睨むように音無を見上げると、次いで木野と漫遊寺イレブンに視線を移した。
その中の誰もが心配そうに木暮を見つめており、音無のように期待の目を向けている者はいない。

どうせ誰も俺のことなんて――視線を足下に戻してせっせと靴紐を結んでいると、瞳子から「木暮君」と声が掛かった。

「君にはDFをお願いするわ」

「俺が、DF…?」

「適任だと思うけど。不服かしら」

瞳子の問い掛けに「別に。地味だなと思って」と立ち上がる。それを聞いていた夏未は「じゃあどこがいいって言うの?」と眉を顰めた。

「拘ってないんで、DFでいいです」

棘のある言い方をする木暮に、ベンチに座っていた目金が「ま、せいぜい怪我しないことですね」と眼鏡を持ち上げる。どこか上から目線なその態度が気に食わず、木暮は彼を鋭く睨みつけた。
そんな木暮のモチベーションを上げたくて「大丈夫! 木暮君ならやれるよ。私、信じてるから」と音無が拳を握る。

「あのさ。信じてるって、そんな簡単に言うなよ」

しかし彼女の言葉は逆効果だったようで、木暮は吐き捨てるように言うとピッチへ走って行ってしまった。
「どうなんですかねえ、あの態度!」「ちょっと心配かな…」ベンチにいるメンバーは未だ彼の背中を心配そうに見つめる。木暮を信用していない様子の目金と木野に、音無は「木暮君は、やればできるんです」と言い切った。

「皆、本当の木暮君を知らない…」

『……』

木暮を信じようとしない周囲の人間を気に留めず、音無は真剣な眼差しで彼を捉える。彼女の言葉が聞こえていた如月は、震える体を落ち着かせようと左手首を握りながらピッチに立つ木暮を見据えた。

＊

「雷門中――ジェミニストームを撃ち破った唯一のサッカーチーム…。たったそれだけのことで我らに勝てると思うとは、我らイプシロンの選手も随分と舐められたものよ」

デザームの声にハッとした木暮が周りを見渡す。同じユニフォームを着た雷門イレブンはアップをしており、本気でイプシロンと戦おうとしている姿勢に「信じられねえ…!」と顔を隠すように襟を立てて握った。

「レーゼに勝ったなら、少しは手応えあんじゃねえの?」「お手並み拝見といきましょう」「ぶっ潰す」「命知らずって、マキュア大好き」イプシロンの面々は余裕の笑みを携える。木暮は青褪めた顔でそれを聞いていた。