【イナズマイレブン】氷雪のエクリプス Ⅱ (ページ36)

今日:2 hit、昨日:42 hit、合計:10,032 hit

第85話ページ36

「木暮君だってサッカー部の一員です!!」

音無は、明らかに木暮の参加を快く思っていない雷門イレブンを説得しようと彼らの目を真っ直ぐ見てそう言う。
しかしそれだけでは納得できる筈もなく、染岡と土門は「でも補欠だろ? 大丈夫かよ、そんな奴入れて…」「下手にウロチョロされると、却って邪魔になるし…」と渋った。

「そんなことないです! 木暮君なら大丈夫です!! だからお願いです!! お願いします…!!」

音無の必死の訴えに何も言えなくなった雷門イレブンは、困ったように瞳子へ視線を向ける。瞳子は表情一つ変えずに木暮を見るだけで何も言わなかった。

「キャプテン! お願いします!!」真剣な面持ちで近付いてきた円堂に音無は勢いよく頭を下げる。顔を上げた彼女の目を見ると、円堂は「分かったよ、音無」と微笑んだ。

「キャプテン…!」円堂の判断に「ええっ…!?」と声を上げる雷門イレブンを気にもせず、音無は表情をぱあっと輝かせる。

「いいですよね、監督!」

「…好きにすればいいわ」

瞳子の了承も得たことで木暮の参加が決まった。音無は両手を膝の前で合わせて「ありがとうございます!」と瞳子に頭を下げる。

「さあ!」張り切る音無とは対照的に、木暮は首を横に振って後退りした。ボールを抱えて縮こまり「いや……でも、俺…」と消極的な態度を見せる木暮に、音無は「なに怖気付いてるの!」と顔を近付ける。

「皆を見返すチャンスじゃない!」

「でも…」

頭をボールに押し付け、木暮は頷こうとしなかった。これまで漫遊寺イレブンがサッカーをする様子を見てきただけに、彼らがイプシロンに歯が立たなかったことで自信をなくしてしまったのだろうか。
参加することを承諾も拒否もせず煮え切らない木暮の気持ちを察してか、唸る彼の横顔を覗き込むと音無は彼に微笑みかけた。

「大丈夫よ、木暮君なら。私、信じてるから!」

「…!」

その言葉にハッとした木暮は「俺を、信じてる…?」と顔を上げる。音無は彼と目が合うと、瞳を真っ直ぐ見つめて頷いた。

「ええ、信じてるわ。木暮君なら、きっとやってくれるって!」

その言葉には偽りがないことが彼女の真剣は眼差しから伝わってくる。

何が音無をあそこまでさせるのかは分からないが、木暮のために必死になって頭まで下げるのだから、彼女にとって何か大事なことがあったのだろう――けほ、と小さく咳をした如月は、音無の背中を見つめていた。